Some Time In New York City

    最初に、忘れる前に記しておこうと思った。
    先日発売のSACD、John&Yokoのアルバム『Some Time In New York City』を聴いての第一印象、あるいは1曲目が出たとたんに浮かんだこと、それは「なんて音が悪いんだ!」と言うことだった。

    STINY (3)
    *SACDはLPと違って1枚





    1970年代に入っているというのに信じられない帯域の狭さや、ほぼモノミックスと呼べそうなステレオ感を感じさせないミキシング、ぼやっとしてそれぞれの音がはっきりしない全体の音に、SACDの器を使う必要が果たしてあったのか?と思えた。
    これが初めてSACDで聴いた際の感想だ。

    こんな音作りを70年代以降に行うなんて、もしかしたらPhil Spectorか?と思ったが、案の定、その通りだった(恥ずかしながら、全く覚えていなかった……)。
    それにしても、第一印象はひどかった。


    では、これってLPでは一体どういう音だったっけ?と英国盤を探したが出てこず、ようやく見つかった米国盤で確認すると、さらに帯域が狭く思われるだけでなく、SACDと比較するとコピーテープっぽい音(しかも2世代ほどは違うような…)だった。
    SACDで聴こえたぼんやり感以上に各楽器の音が聞き分けづらい。

    STINY (1)
    *SACDの背後が米国盤LP(右側はLPに同封のレター)

    けれども、中低音域が少し厚めで、(2曲目以降でわかるが)音の立体的な再現はLPの方が良いように思えた。
    これは、あくまで僕が使っているSACDプレーヤーとアナログ再生機器での比較の話。

    STINY (2)
    *米国盤のみに入っていた?John &Yoko committeeへのレター(今回の紙ジャケットには含まれず)

    ちなみに、僕の現用機器の音のグレードは、アナログ>SACDだ、もし全く同一の音源を使用した場合において。
    だから、SACDプレーヤーのグレードを1~2ランク上げてアナログに合わせたなら、『Some Time In New York City』のSACDと米国LPとではさらに音質に差が出てくるだろう。


    その後、2010年のremaster CDは一体どんな音だったのか?と探すと、買ったまま一度も聴いていなかったとわかった(苦笑)。
    今回初めてシュリンクを開いて聴いたが、SACDとは少しバランスが違っていて、比較するならば(ややアナログ盤よりの)中低域に厚みを感じる音だった。でも、SACDで聴く方が音質が良いように思える(…当然なのだけれど)。

    STINY (14)
    *2010 CDはLP同様にCD2枚組

    それなら、Remix Remaster CDはどうだったろう?と思え、これも探して引っ張り出してきたが、こっちをSACDで発売すべきだったのではなかろうか?と思えてしまう。

    STINY (18)
    *Remix Remaster CDは1枚もの

    ここでは、少なくともオリジナルのミキシング・マスタリングで作られたナローレンジなサウンドから脱却し、それぞれの楽器が明瞭であり、より自然なレンジ感で聴ける音にまとめられている。それでも、70年代当時としては良い音で録音されているとはあまり思えないが。

    Remix Remaster CD作成用のマスターも、2005年であれば既に24ビット/96KHzでA/D変換されremasteringされていたのでは?と思えるし、こちらをSACD化していれば、オーディオ的には第一印象はずっと良いものになっていただろう……但し、LPでのレコード2枚目に当たるlive音源は残念ながら割愛された部分があるため、オリジナルに準拠していないのだけれど。


    SACDでそのナローレンジな音を聴くと、音作りがいかにもPhil Spectorのwall of soundで、その印象は1曲目から明らかなのだが、特に2曲目のYokoの「Sisters, O Sisters」は60年代初頭にPhil Spectorが作り上げたgirl popっぽいサウンドを狙っているのは確実だ。
    Yokoのヘタウマ(わざと?)ボーカルは、子供が歌っているようにも聴こえる。

    ところが3曲目の「Attica State」でYokoのきついボーカルが俄然強い主張を放ち、続く「Born in the Prison」では、ソフトに歌っているにも関わらず強く印象を残す。A面ラストはJohnの「New York City」で終わるが、そうでなければA面のメインボーカルはYokoだったと思えてしまう。
    それは、B面で実際にそういう印象となるのだが……。

    B面で圧倒的にインパクトがあるのがちょっと「Come together」に似たB-1「Sunday Bloody Sunday」とB-5「We're All Water」だ。間にJohnがソロで歌う「John Sinclair」を挟むものの、B面は本当にメインボーカリストはYokoであり、前述のB-1,B-5が何よりも最高だ(特に「Sunday Bloody Sunday」はJohnがメインボーカルでYokoはコーラスタイトルのリフレイン部分のみなのだが、その部分の歌声とエンディング部分での独特の叫びがインパクト大だ)。


    このアルバムのLP1枚目にあたるスタジオ録音盤については、(日本のBeatlesファンの多数派を占めると推測しているが)Yokoの歌が嫌いだったならば、かなり厳しい内容だろう(2枚目の一部もそうだろうが)。

    でも、このアルバムはJohn Lennonのソロアルバムでなく、最初からJohn&Yokoのアルバムなのだから、Amazonのレビュー等でよく見受けられるYokoの歌を非難する姿勢はおかしい。

    それにLP2枚目の中でも最高なのは、Yokoの「Don't worry Kyoko」なのだし。
    Yokoの絶叫とブラスセクションが即興的に掛け合う一瞬こそが、LP2枚目のLive音源の中でも最高の瞬間の一つだと思っているので。

    STINY (11)
    *米国盤LPのレーベル


    最後に、今回もそうなのだが、音質についての第一印象は何度も聴いているうちに変わってしまい、本来そういう音だとわかれば、別段何とも思わなくなってしまった。
    つまり、慣れだ。

    Yoko嫌いの人もYokoの歌にただ慣れてもらえれば、このアルバムは良いアルバムに変わるようにも思うが。

    STINY (4)
    *中央が今回の紙ジャケに含まれる内袋とポストカード(背景は米国盤LPの内袋。左側、兵士は黒の裏面で紙ジャケットにはないから、米国盤のみか?・・・英国盤が見当たらず)




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    テーマ : 洋楽ロック
    ジャンル : 音楽

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    No title

    こんにちは。
    リミックスされたジョン・レノンのアルバムには、ひどいな、と思うものもありましたが、「Sometime~」はミックスをやり直してよかった、と僕も思いました。
    マザーズとのライヴも、個人的にはあれくらいの量で充分です。

    あと、ジョンとヨーコの声は質が違いすぎて。並べて聴くとヨーコの声が勝っちゃう。バックのサウンドにしっかりはまっていない分、逆に印象に残るのかな、なんて考えるのですが。

    No title

    ジョンのSACD紙ジャケ『ジョンの魂』『Iイマジン』の売れ行きは好調なようです。ジョージのSACDも恐らく来年早い時期に出そうな雰囲気ですね(ジョージのハイレゾ配信はすでに始まっていますので)。

    でも結局のところ、ハイレゾだSACDだのと言っても、その音質を左右するのは元のマスターテープのクオリティ次第ですよね。ビートルズのハイレゾが凄かったのは、それだけ60年代のアビー・ロード・スタジオの音が優秀だったことの証明であったと。

    ところが70年代に入ってミキシングコンソールもテープレコーダーもいっきに多チャンネル化が進み、アンプも真空管からトレンジスタに移行するなどで、ノイズや歪みなど音を汚す要因が増えたりと、しばらく暗中模索の過渡期にあったと。

    そんな状況のなかでミックスされたジョンのサウンドプロダクションのクオリティも結構揺れ動いていたように思います。なので、10年前に一計を案じてすべてリミックスしなおしたことは、拙は必然だったと思います。そのとき元素材のマルチマスターから96/24でA/D変換されたことは間違いないにしても、当時はCDリリースが前提だったため、リミックスでCDフォーマットの44.1/16にダウンコンバートされたことも考えられます。もしそうなると、リミックス後の音源からハイレゾ化(SACD化)することは今となっては叶わないことかもしれません。

    Re: No title

    foolishprideさん、こんにちは。
    コメントありがとうございます。

    > リミックスされたジョン・レノンのアルバムには、ひどいな、と思うものもありましたが、「Sometime~」はミックスをやり直してよかった、と僕も思いました。

    僕はMind gamesとRock'n rollはremix盤のほうを気に入ってました。
    本作も聴きやすいと思います。

    > マザーズとのライヴも、個人的にはあれくらいの量で充分です。

    その点でオリジナル盤を尊重する(あるいは、実際にカットされた曲が好きだった)人からは改変と言うよりも改悪と言われてましたね。僕はカットされたJamragは残して欲しかったクチですが。
    それよりもボーナストラックが何ともアルバムの印象を変えるので、微妙かなと思ってました。

    > あと、ジョンとヨーコの声は質が違いすぎて。並べて聴くとヨーコの声が勝っちゃう。バックのサウンドにしっかりはまっていない分、逆に印象に残るのかな、なんて考えるのですが。

    仰るとおりだと思いました。声質が違いすぎてハモっても溶け合わないですし。
    ただ、このアルバムの猥雑なバックサウンドに対してはJohnよりもYokoの声質のほうが逆に合っているようにも思えます。
    いずれにせよ、Yokoの声が勝っちゃうんですよね。


    Re: No title

    路傍さん、どうも。

    > でも結局のところ、ハイレゾだSACDだのと言っても、その音質を左右するのは元のマスターテープのクオリティ次第ですよね。

    まさにその通りで、確かに器が大きくなった分だけ音に余裕を感じるのですが、いかんせん元のマスターのクオリティに限度があっては、今ひとつな音質を再認識させられるだけと思いました。

    > ところが70年代に入ってミキシングコンソールもテープレコーダーもいっきに多チャンネル化が進み、アンプも真空管からトレンジスタに移行するなどで、ノイズや歪みなど音を汚す要因が増えたりと、しばらく暗中模索の過渡期にあったと。

    John LennonのソロアルバムでオリジナルLPの音質が良いと思えたものはないから、まさにその時代の産物だと思えるものの、Mind gamesのremix remasterなんかはかなり音質が改善されたと思えたので、当時のミキシングとマスタリングの過程でAudio的には見るところのない作品に仕上がったのかなと思えます。


    > そんな状況のなかでミックスされたジョンのサウンドプロダクションのクオリティも結構揺れ動いていたように思います。なので、10年前に一計を案じてすべてリミックスしなおしたことは、拙は必然だったと思います。

    今振り返ると、あの対応は価値があった、少なくとも音質改善という点で、と僕も思います。

    > 当時はCDリリースが前提だったため、リミックスでCDフォーマットの44.1/16にダウンコンバートされたことも考えられます。もしそうなると、リミックス後の音源からハイレゾ化(SACD化)することは今となっては叶わないことかもしれません。

    その可能性は高いのかなと思えました。
    確か過去のアナウンスでは、今後の音源はremix remasterに統一していくとの話で、2010年のオリジナルmixのremasterは最初で最後とのこと。
    ところが今回の再発で音源は全て2010年版の元となったハイレゾだったことから、remix remasterのマスターはハイレゾ対応ではないのかな?と思えました。
    それとも単なる方針転換か?


    プロフィール

    JD

    Author:JD
    自分の感覚としては(昔の?)ラジオDJのネット版のようなもののつもり。僕は1970年代のオーディオ全盛期の最後に属する世代で、ペアマイク持参で生録に挑戦した世代。国内盤LPが高価だったので輸入盤を買っていた、そういう中高生時代を過ごした。

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