Beatles for sale  その2

    前回、その1で書いたが、このところ何回このアルバムを聴いただろう?
    少なくとも英国オリジナルx2種類はそれぞれ10回以上、2014 mono盤は、その倍ほどは確実に聴いている。
    おかげで、この音が普通に思えてきた……つまり、こういう音なのだとやっと掴めた。
    それ以前の印象は、その1で記したとおり。

    「音が良くない」と思う場合、逆に「良い音」のイメージがあるわけで、それと隔たりがある(しかも音質劣化方向に)から音が悪いと思える。

    BFSEUAU (2)
    *今回の比較対象外とした各国Mono盤 左:フランスオリジナル、右:イタリアオリジナル

    ところが、『Beatles for sale』はこんな音なんだと一度認識してしまえば、基準となったLPをものさしに、それよりも音が良いとか良くないとか判断できる。
    ちょっと時間がかかったけれど、大枠をまとめよう。


    まず何よりも、A-1の「No reply」が全体像を見えにくくしていた。
    この曲だけ(いや、他にもB-4の「Every little thing」もだが)は、中音域に厚みがあるものの、輪郭のはっきりしないポワーンとしたような音で、英国オリジナル盤(マト3Nと4N、両方。以後同様)でも、このアルバムの中で音がはっきりくっきりしていない曲だと言える。

    ところがA-2「I'm a loser」から、音がはっきりくっきりし、ずっとましになる。

    英国オリジナル盤は、僕のオーディオでの印象は、歌を中心に音をまとめてあるイメージ。そのため、中音域に厚みがあり、高域や低域にはあまり意識は向かない。けれども、良く聴くと、ちゃんと必要な音は出ていることに気がつく。
    比較した盤の中でも英国オリジナル盤は、最もバランスの良い音のように最終的には思えた。


    次に、80年代後半の米国CDマスター盤だが、英国オリジナル盤ほど中音域に厚みはないせいか、低域から高域までの帯域は英国オリジナル盤よりもずっと平均的に聞こえる。さらに音質的には高域寄りにシフトし、相対的に低域は薄い印象。しかしながら、曲によっては英国オリジナル盤以上に低域が厚い曲もある。
    きっと本来のマスターの音はそんな音なのだろう。

    とは言え、音質的には音が平坦で、低音域などは音が団子状に固まって聴こえ、何度も聴くうちに英国オリジナル盤にはかなわないなと思えた。


    そして2014 mono盤だが、帯域的には上から下まで一番広く音溝に刻まれているのは、このLPだろう。
    これを「No reply」だけで判断してはいけない。
    と言うか、「No reply」をよく聴くと、1番では歌が眠いが、2番からましになり、サビに入ると非常に良くなり、以後は安定する。
    A-2「I'm a loser」からは、さらに音質が良くなる印象を受ける。

    けれども、英国オリジナル盤のように中音域を持ち上げて歌を中心に音を組み立てているのではない。歌よりもバンドのサウンド全体を聞かせようとしているかのような音作りかなと思える・・・狙ったかどうかは別の話として。

    低域の量感や沈み具合、アコギやシンバルの高域のしゃきしゃき感やきらきら感の質感はこのLPが一番良いと思う(とは言え、それほど高域については強くない)。
    けれども、歌が引っ込んでいるために良い印象を受けない(特に「No reply」は)。

    不思議なことに、09 remaster Mono CDも聴いてみたが、やはり音が違っていて、どちらかと言えばCDマスターを使用したLPに近い傾向の音だった。「No reply」は全然音の傾向が違う…使用するカートリッジにもよるだろうが。

    となると、2014 mono盤は、やはり英国オリジナル盤カッティングのメモに基づいて、どちらかと言えば中音域寄りに近い音に作られてあるのではなかろうか?本来は。
    けれども残念なことに、オリジナル盤とは似つかないほどに中音域に厚みはなくなっていて、全体的にオリジナル盤よりも歌は引っ込んでいる。
    オリジナル盤と同じ音量で比較しようとすると、歌がひっこんでいるため、どうしても印象が悪くなる気がする。

    ただ、そのあたりに気がついて、全体のサウンドを聴こうと耳を傾けると、オリジナル盤よりも歪っぽさが少ないだけでなく、音もなめらかで、特に内周部分の曲(特にA-7やB-7)については、このLPの音質が最高ではないかと思える。
    A-7など、オリジナル盤ではやたらとナローレンジな印象を受ける。

    また、「Honey,don't」や「I'll follow the sun」のような比較的に音質の良い録音では、このLPの優位性を確認できる。

    BFSEUAU (4)
    *今回の比較対象外とした各国Mono盤 左:オーストラリアオリジナル、右:スペインオリジナル

    とは言え、初期の3枚のアルバムほどの音質向上感は無い。
    オリジナル盤よりも0.5枚ほどヴェールが剥がれ、低音域の輪郭がはっきりし、高域も同様で、例えばB-7の間奏のバックで鳴りっぱなしのシンバルがちゃんと見えるようになった気がするのだが、全体の出来具合からすると、オリジナル盤に対して一長一短といったところ。

    ちなみに、今回の比較はずっとステレオカートリッジのP-3Gで行っている。
    と言うのもSGTを聴いて、AT33-Monoよりも音質差が掴みやすいと思えたから。

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    テーマ : 洋楽ロック
    ジャンル : 音楽

    コメント

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    No title

    よくぞここまで仔細に分析されましたね。脱帽です。

    UKオリジの音は、当時のモノカッティングレースの音そのものであることに加えて、やはりコンプを掛けていることで、ナローレンジながらも中音域にエネルギーが集中したソリッドな質感になっているのだと思います。

    マスターテープの音は、そのカッティングレースのナローな特性を見越してハイ上がりに作っているだろうし、もう少し低域も出ていると。その辺が多少なりともMONO LPリマスターから伺えるよな気がします。しかし、いかんせんテープの摩耗・劣化からくる磁気抜けによる音痩せは免れることができず、ここだけはどうしてもウイークポイントになってしまいます。アナログによる補正ではこれが限界かもしれませんね。

    もし今後デジタルでハイレゾ化がされることがあれば、現在失われた倍音を再現する技術が進んでいるので(ビクターのK2テクノロジーなど)、また違った結果が出るかもしれません。

    Re: No title

    路傍さん、こんばんは。
    コメントどうもありがとうございます。

    このアルバムは、とても音が掴みにくく苦労しましたが、オリジナルと新Monoとの音質差ははっきりしていました。
    英国オリジナルも今ではナローレンジで中音域だけが分厚い、いかにも古臭い音にしか聴こえません、
    それが標準と思えるように何度も聴かなければならなかったのは大変でした。

    > やはりコンプを掛けていることで、ナローレンジながらも中音域にエネルギーが集中したソリッドな質感になっているのだと思います。

    今回思ったのは、まずカッティングレベルがオリジナル盤も低いため、過去3枚のアルバムと比較すると、それほどコンプをかけていないのではないか?と思えました。小音量で迫力を感じた3枚目とは随分違いました。

    でも、大元のマスターの音は路傍さんご指摘の通りかなと僕も思いました。

    > もし今後デジタルでハイレゾ化がされることがあれば、現在失われた倍音を再現する技術が進んでいるので(ビクターのK2テクノロジーなど)、また違った結果が出るかもしれません。

    そうですね。
    09 remaster Monoのほうが個人的には聴きやすい音だなと、このアルバムに関しては思いましたが、オーディオ的には09 remaster Monoは、もう少し音質改善できるだろと思えます。例えば今回のアナログ用に用意されたデッキで再生し、当時のレシピを無視してマスタリングすれば。とは言え、この間の約5年でマスターテープが劣化している可能性もあります。
    プロフィール

    JD

    Author:JD
    自分の感覚としては(昔の?)ラジオDJのネット版のようなもののつもり。僕は1970年代のオーディオ全盛期の最後に属する世代で、ペアマイク持参で生録に挑戦した世代。国内盤LPが高価だったので輸入盤を買っていた、そういう中高生時代を過ごした。

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