Beatles US Boxの楽しみ方3

    2/8追記:若干の補足を最後に追加した
    2/9追記:『Yesterday and today』収録の3曲のstereo mixingについて補足した


    この話題は早く切り上げようと思い、連続して取り上げることにした。

    前回の結びで次のように記した。
    「となると、残る2枚こそが採用音源批判の対象かなと思え、僕が特に残念に思えるのは、最も話題に上る『Yesterday and today』でなく、『Revolver』だと思う。」

    まず、US Box関連で最も話題に上っている『Yesterday and today』収録の「I’m only sleeping」のstereo mixのおさらいから。

    yesterdaytpday (4)
    *僕はブッチャーカバーLPは持っていない(ジャケットに1万円以上もの価値を見出せないから)


    この曲と「Dr. Robert」「And your bird can sing」の3曲は、Capitol recordsからの要請に応じて、米国用にわざわざmono mix作業が行われた(66年5月12日)。
    結果的に英国に先駆けて米国で発売され(6月20日)、stereo LPではmonoを擬似ステレオ処理して収録された。

    yesterdaytpday (2)
    *Mono

    今回も見つからなかったが、初版のRainbow~Green~Apple レーベルの一部までのStereo LPには擬似ステレオ版が収録。

    yesterdaytpday (5)
    *Stereo 2nd press label

    yesterdaytpday (1)
    *Stereo Apple labelで擬似ステレオ3曲収録

    その後、Apple レーベルの一部~オレンジ~パープルレーベルではtrue stereo mixに差し替えられた(但し、パープルの一部にも擬似ステレオのまま収録されているらしい)。

    yesterdaytpday.jpg
    *true stereo 3曲入り

    その際に、3曲とも新たにmix downがなされたのか、あるいは英国のmasterをcopyしたところ誤って「I’m only sleeping」だけ正式採用mixでは無いテープをcopyしてしまったのかは不明だが、挿入される逆回転guitarのmixingに英国stereo盤とは微妙な違いのあるmasterが使用された。
    *2/9補足;1966/5/20に3曲のstereo mixingが行われ、「Dr.Robert][I'm only sleeping」の2曲のみ英国とは別mixを米国に送ったとRecording sessionには記載してあった

    そのため、今回のUS Boxで初CD化が期待されたのだが、蓋を開けると英国masterに置き換えられてしまっていた。CD化を熱望していたマニアが嘆いたわけだ。

    僕自身もマニアだと思うがLPで聴けるので、残念に思うものの落胆するほどではない。
    それに、オレンジ~パープルCapitolの中古LPであれば、コンディションもそれほど悪くない状態で1000円未満で手に入ると思われる。Rainbow Capitolだと、同じ値段ではボロボロの状態のものしか手に入らないことからしても、入手のしやすさからしても、ハードルはとても低いと思う。

    なお、米国mono LPに収録された「Dr. Robert」は、曲終わりのフェードアウト部分でJohnが「OK Fab」と言う声が聴こえるとの話だが、かなり大音量で再生しても「OK」までしか聞き取りできない……と思うが(ヘッドホンでモニターしたらなんとか聞き取れるのかもしれないが、試していない)。ほとんど消えかけの音だ。
    今回のCDでは聴こえない。

    yesterdaytpday (3)



    さて、Beatles US Boxの採用音源に関して、最も残念なのは『Revolver』だと思う。
    その理由は、批判対象の5枚の中で英国盤とほぼ同じ内容なのがこれだけだからだ。
    一部の曲を「Paperback writer」や「Rain」に置き換えしていたなら、そうは思わなかったのだが。だから、僕でさえこのアルバムだけはあえて米国masterを使用したほうが良かったと思えた。


    revolver (2)
    *Stereo 2nd press label

    実際、米国盤LPを聴くと特にstereo LPは、コンプレッサーを使って音を詰め込んだような(うまい表現がわからないが)圧力の強い音に変化している。例えば英国stereo盤が低域から高域まで自然に幅広い周波数帯域の素直な音に聴けてしまうほど、米国stereo盤は(狙いとしてはドンシャリ的な)刺激的な高音であり、かつ太い音になっている。「Good day sunshine」の終わりかけなど英国盤と違ってシンバルが響きまくるうるさい曲と言う印象を受けるし、「For no one」も冒頭、硬質なpianoが強めに入ってくるサウンドだが、英国盤ではソフトに入ってくる(ように思えてしまう)。
    米国盤は小音量で再生されることを念頭に置いているのかもしれない。カッティングレベルも高い。
    * stereo LPは、Rainbow Capitolが見当たらなかったので、Greenレーベルでの印象だが。

    LPだと、そのように英国/米国盤とで音質・音傾向の違いを楽しむことができる。
    英国盤のほうがオーディオ的には好ましい気がするが。

    revolver (3)
    *Mono

    米国盤MonoもStereo盤と同傾向にあると思うが、英国Monoは英国Stereoよりもややナローレンジ気味に聴こえるため、Stereo LPでの比較ほどの差は感じない。

    revolver.jpg
    *Stereo Apple label

    米国仕様の『Revolver』は、英国仕様よりも3曲少ないものの、おかげで僕の嫌いな1曲(Beatlesで最もつまらない曲の一つだと思う)が含まれない点だけは好ましく思っている。『Yesterday and today』だと、その曲の次から再生している(笑)。

    2/8追記:
    米国盤『Revolver』を「圧力の強い音」と例えたが、今頃になって「音圧が高い」とすれば良かったと気づいた。
    マスタリングの際にデジタル音源をデジタルeffectによって音圧を高める場合、無音とみなされた信号を間引いてしまうため、実はそこにこそ存在していた“空気感”信号が削られてしまい、オーディオ的には大切な情報量が間引かれたことを意味することになる。それに対して、60年代の録音環境下で行われたコンプレッションは、デジタルのそれとは異質なものだ。
    Capitol BoxのVol.1やVol.2収録の、米国音源をremasterした音は僕のオーディオではLP再生と同じ音はしておらず、LPで聞こえるよりもさらに音圧が高められているように聞こえる。それが大元の米国masterの音なのか、あるいは、やはりdigital effectでのコンプレッションによるものなのかはわからないが。
    個人的には米国盤LPを聴く方がCapitol Box Vol.1やVol.2よりも自然な音に思える。

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    ジャンル : 音楽

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    Yesterday and todayについて

    JDさん、ご無沙汰しております。いつもコアなオリ盤の記事を楽しみに拝見しております。

    さて、『Yesterday and today』のオリ盤の件なのですが、ここでのステレオミックスのうち、UK『Rubber Soul』からの4曲は、メインボーカルの右もしくは左チャンネルを中央に寄せて定位操作したキャピトル独自ミックス(厳密な意味でのマルチトラックからのリミックスではない)が使用されています――日本製ブートの紙ジャケを聴いてそのことを知りました。ところが、拙が所有するAppleレーベル後期プレスと思しき盤(UK『Revolver』から先行収録された3曲はトゥルーステレオに差し替えられているプレス)のそれは、UKオリジナルミックスに戻されています。

    その辺の関係って、どこで切り替えられたんでしょうか?JDさんがお持ちの疑似ステレオ3曲収録のAppleレーベル盤では、Rubberからの4曲はキャピトル独自ミックスになってますでしょうか?もしそうだとしたら、Revolver3曲が疑似ステレオからトゥルーステレオに差し替えるのと同じタイミングで、Rubberの3曲がUKオリジナルミックスに差し替えられたことが想像できます。

    > その際に、3曲とも新たにmix downがなされたのか、あるいは英国のmasterをcopyしたところ誤って「I’m only sleeping」だけ正式採用mixでは無いテープをcopyしてしまったのかは不明だが、

    そのRevolverのトゥルーステレオ3曲のマスターテープは、66年のY&T初回リリース時には英国からとり寄せられていたのですが、モノミックスのマスター到着から遅れたため、少しでもリリースを早めたいと考えたキャピトルが急場をしのいでそのモノミックスを疑似ステレオにしてステレオ盤に収録したようです。ところが次のプレスからトゥルーステレオに差し替えるはずが、そのタイミングを70年代まで逸してしまった、というのが定説になっています。

    > 実際、米国盤LPを聴くと特にstereo LPは、コンプレッサーを使って音を詰め込んだような(うまい表現がわからないが)圧力の強い音に変化している。例えば英国stereo盤が低域から高域まで自然に幅広い周波数帯域の素直な音に聴けてしまうほど、米国stereo盤は(狙いとしてはドンシャリ的な)刺激的な高音であり、かつ太い音になっている。

    Revolverのキャピトルのオリ盤は所有してませんが、コンプが掛かったドンシャリ系の音になっているというのは分かるような気がします。でもその音はラッカー盤にカッティングする際にイコライザーで施された音で、プレス工場へ送られるカッティング用のプロダクションマスターで作られた音ではないような気もします(あくまで拙の想像ですが)。なので、仮にキャピトルマスターを使用しても、オリ盤通りの音にはならなかったかもしれません。

    ちなみにほかのキャピトルのオリ盤でも聴かれるドンシャリな音は、拙が中学時代に使っていたローファイなシステムコンポでは、明るく元気に鳴ってましたが、現在所有する中級クラスのコンポでは、どうにもノイジーでやかましく聴こえて仕方ありません。その時代の装置に相応しくインパクトのある音で聴かれたのがキャピトル盤の音だったのかもしれません。

    Re: Yesterday and todayについて

    路傍さん、こんばんは。
    コメント&情報どうもありがとうございました。
    こちらこそ、いつも興味深く拝見させていただいてます。特に某S社のDigital file playerの情報は参考になりました。

    擬似ステレオ3曲のtrue stereo mixの件、コメントいただいた後に調べたら66年5月20日にミキシング作業が行われていましたね。Recording sessionによると、3曲のうち「And your bird…」のみ英国mixと同一で、後の2曲は英国mixとは別とありました。

    それよりも、擬似ステレオ収録LPの『Rubber soul』からの4曲の定位については、初めての情報でした。
    そこで、対象となるgreen、appleの2枚と、対象外のpurpleとを比較しましたが、はっきりとわかる定位の違いは聞き取りできませんでした。
    なんとなく、「Drive my car」だけpurpleの方が左右の分離が良くなったようにも聴こえますが、定位の変化でなく、それこそカッティングの際に通していたイコライザーかコンプレッサーの類の影響?による左右チャンネルの干渉が弱まり、結果として分離がはっきりとした、ぐらいのことなのかな?と思える程度でした。それでも非常に微妙な程度です。

    例えば、米国LPの『赤盤』に収録された『Rubber soul』関連曲は、演奏チャンネル側の低域を(フィルター等で分配し)あえて中央よりにミックスし、中抜けを弱めながら低域を補強するミキシングが採用されていますが、そういうレベルであればはっきりとわかる違いだと思います。

    となると、初版のrainbowでは、定位を変えているのかもしれませんね。僕も持っているのですが、ここ数年、(80年代のmonoプレスとセットで)行方不明で確認できません。残念です。

    >でもその音はラッカー盤にカッティングする際にイコライザーで施された音で、プレス工場へ送られるカッティング用のプロダクションマスターで作られた音ではないような気もします(あくまで拙の想像ですが)。なので、仮にキャピトルマスターを使用しても、オリ盤通りの音にはならなかったかもしれません。

    そうですね、僕も同様に推測しています。

    >その時代の装置に相応しくインパクトのある音で聴かれたのがキャピトル盤の音だったのかもしれません。

    それに加えて、当時の他アーティストなどの米国盤LPの音傾向に合わせていたとも考えられますね。

    追伸

    JDさん、ご返答ありがとうございます。拙がY&Tの紙ジャケのブートレグで聴いたそれらの印象をもう少し詳しく書くと、「Nowhere Man」では明らかにメインボーカルの右チャンネルが中央に寄せられていることがはっきりとわかります(冒頭の無音であるはずの左チャンネルからもメインボーカルがはっきり聞こえます)。このことはビートルズ全曲バイブル(日経BP)でも指摘されているのでほぼ間違いないと思います。ただしほかの3曲「Drive My Car」「What Goes On」「If I Needed Someone」は、UKオリジのRUBBER SOULや拙が所有しているAPPLEレーベルのY&Tと比較すると、確かに左右チャンネルの分離がはっきりせずに中央で混ざり合ってはいるのですが、これはJDさんがおっしゃる通り、カッティングの際のイコライザーなどのエフェクターを通したときの機器の精度の差で、初期盤でクロストークが生じて左右チャンネルの干渉が強くなった(後期盤では精度が上がって干渉が弱まって分離がはっきりした)と考えられるかもしれません。アナログ機器でのクロストークの精度差は結構大きいからです

    拙もいつかは初期プレスRAINBOWレーベルの現物を手に入れられれば検証してみたいと思います。勿論ブッチャー・カバーは無理ですが(笑)。

    Re: 追伸

    路傍さん、こんばんは。
    追伸ありがとうございます。

    今回のコメントを読んでいて、僕も思い出しました。
    確かに、「Nowhere Man」の定位違いのLPがあったと思います。ただ、それがRainbowの米国LPだったか、日本のAP盤で出た同一タイトルだったか、そこだけは覚えておらず。
    そして、そのLPを聴いた時まさに今回の路傍さんと同じ疑問が湧いて(笑)他のプレスはどうだったっけ?と気になって確認したら、他は通常の定位だったという結果だったと思います。すっかり忘れていました。

    今日もRainbowを探しましたが、『Revolver』のstereo LPだけ見つかりました。

    >拙もいつかは初期プレスRAINBOWレーベルの現物を手に入れられれば検証してみたいと思います。勿論ブッチャー・カバーは無理ですが(笑)。

    よろしくお願いします。
    僕もLPが出てきたら確認してみます。
    プロフィール

    JD

    Author:JD
    自分の感覚としては(昔の?)ラジオDJのネット版のようなもののつもり。僕は1970年代のオーディオ全盛期の最後に属する世代で、ペアマイク持参で生録に挑戦した世代。国内盤LPが高価だったので輸入盤を買っていた、そういう中高生時代を過ごした。

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