Listen/Billy J. Kramer with the Dakotas

    Gerry and the pacemakersの1stアルバム『How do you like it』を取り上げたとなると、これも取り上げないわけにはいかないだろう。

    Billy J. Kramer with the Dakotasの1stアルバム『Listen』(PMC1209)

    listen (4)

    Billy J. Kramer with the Dakotasは、Parlophoneから63年にデビューしているが、まともなオリジナルアルバムは英国ではこの1枚のみ。



    数年後の67年3月に発売された手抜き編集盤『Billy boy』ではジャケット表の表記がBilly J. Kramer and the Dakotasと誤記されており(裏やレーベルでは正しくwithとある)、裏のライナーでは、まるで過去のアーティストのような扱いではないのか?と思えてしまうほど。ジャケット写真、ライナーなど、アーティストへの愛の感じられないひどい編集盤だった。しかし、収録された楽曲のクオリティは十分に高い。

    一方、米国では64年~65年に3枚のオリジナルアルバムを発表している。

    listen (3)
    *ジャケット裏面

    さて、このアルバムも『How do you like it』、『With the Beatles』同様、twin–trackで録音され、monoとstereoの両方が発売されたアルバムで1963年11月の発売。

    このLPのオリジナル盤はほとんどがmono盤で、僕自身はstereo盤の実物をこの目で見たことがない。
    しかし幸いにも、80年代にBGOが再発した際に、stereoのオリジナルマスターが使用された。

    listen (2)
    *この盤はジャケット、レーベルともにmonoとあるが、かけてみるとstereoという仕様(苦笑)

    この時期にBGOが再発したEMI系グループのアルバムはどれも音質は非常に良いが、音質傾向としてオリジナル盤のほうが中低音域は分厚いと思われる。


    同時期(1963年10~11月)に発売されたLPのStereo mixに関して話をすると、『How do you like it』では多くの曲で間奏やイントロだけをmonoっぽくmixし歌の無い部分の音にも厚みを持たせ、『With the Beatles』では「Money」以外は左に演奏、右に歌と言う割り振り。
    それに対して『Listen』では、演奏と歌は左右に分かれるが、中央にpianoを追加した曲が多いことが特徴と言える。

    Piano追加曲のstereoとmonoとで録音されたpianoに違いが無いことから、音だけで判断すると、これらのmono mixはstereo mixの元となるstereoマスターからmonoにミックスダウンし直したように思われる。この点は、曲によってmonoとstereoとでmixingのやり直しを重ねていたBeatlesへの対応とは違っており、Billy J. Kramer with the Dakotas に対するG. Martinの姿勢を示すものなのかなと思えてしまう。

    とは言え、それでも多くの曲でmonoとstereoとではmixあるいは別編集などの違いが存在する。今回じっくりと比較して書き出してみた。

    A-3「I know」は、中央に定位するpiano からスタートする曲で、もしかするとセッションの初めは左チャンネルにpianoが録音されていたのかもしれない(イントロのみ音質が悪いのはそのせいかも)。最終ミックスでイントロのpianoのみ中央に定位させ、その後登場するpiano(これも中央)はセッション最終ミックス時に同時録音された可能性が高い。

    A-4「Yes」は、stereoの方が繰り返しが1回多い。

    A-6「Sugar babe」は、monoの方が尺が長い。
    その理由は、約2分あたりに3度目の間奏部分がmonoにはあるが、stereo mixには無いことによる。
    Stereo mixを聴く限り、3度目の間奏部分、ばっさりと切られたようには思えないので、mono mixは間奏をコピーして加えた可能性がある。ただし、その部分にはpianoやギターなどを重ねてあるため、ベーシックトラック(但し、歌入り)の時点で間奏を切り貼りして追加したと思われる。
    それと、stereoとmonoとでリードギターが異なる。

    A-7「Da doo ron ron」も中央にpianoが定位している。これは、G. Martinお得意の半速再生でのtape to tape作業時にpianoを同時演奏している。

    listen (1)

    B-1「It’s up to you」は、何故かmono だとfade outで終わるがStereoでは演奏終わりまでしっかりと入っている。

    B-2の「Great ball of fire」は、A-7同様の方法で中央にpianoを追加したと思われる。

    B-3の「Tell me girl」だが、今回比較して初めてわかったが、monoとstereoとでは使用された音源は完全に別テイクだった。
    今回の比較は、PCでの同期再生で確認したのだが、この曲だけmonoとstereoそれぞれのテープスピードを合わせるのが難しく、同期させるのが困難だった。どこかを合わせると、他の部分で必ずズレが生じた。不思議に思い、それぞれをじっくりと比べると、ほとんど同じであるにもかかわらず、微妙に違うことに恥ずかしながら初めて気がついた次第。20年ほど前から聴いていたにもかかわらず。
    演奏部でわかりやすい違いを示すと、monoだと23秒目ぐらいに入っているドラムのフィルインがstereoではない。
    ボーカルは微妙にブレスや歌い回しが異なっていて、12~3秒めのWhy are you cryingの「crying」部分。それと、1:45と2:22あたりの「you mean to me」でわかりやすい。

    B-4「Anything that’s part of you」も中央にpianoが入っているmix。

    このように、それなりにmonoとstereoとで違いがある。そして、pianoを中央に定位させる録音はどう考えても2trackでなく4track録音の方が本来は都合が良かったはず。

    それと、Beatlesの「Money」でも行っていたが、間奏部分にグリッサンドしながらpianoが入ってくる曲が「I call your name」、「Sugar babe」とあり、「Sugar babe」では間奏部分だけダビングが1回(?)多いテープを切り貼りして使っているようで、その部分で音質が悪くなる。

    このことも4track機材の使用を決心させる大きな要因となったのではなかろうか。
    実際、4trackのレコーダーは60年代初頭からEMIスタジオには導入されていたのだが、pop/rockでの使用については、ずっと必要性を検討されなかっただけのことなのだから。

    ところで、写真撮影後に気づいたのだが、英国盤ジャケット裏の型番表記はmonoのみとなっていた。
    もしかして、英国stereo盤は結局発売されずだったとか?

    listen.jpg
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    自分の感覚としては(昔の?)ラジオDJのネット版のようなもののつもり。僕は1970年代のオーディオ全盛期の最後に属する世代で、ペアマイク持参で生録に挑戦した世代。国内盤LPが高価だったので輸入盤を買っていた、そういう中高生時代を過ごした。

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