再び、Moneyのステレオ録音について その3

    「その2」では、大きなミスをしてしまい、再度10/30の作業がどうして必要だったのかを推定し直すこととなった。その部分からもう一度。

    8/21に8曲のmono mixが完成していた。「Money」もその中に含まれる。
    そして、9/30にG.Martinが「Money」にpiano、「I wanna be your man」にorganのダビングを施す作業と、追加のmono mixingを5曲行っている。

    そして、この時に「Money」Take7の上に新たなpianoを加えたものが3種類作られたとある。



    このオーバーダビングのセッションが、「Money」のstereo mixing専用のものか、あるいはmono mixingもやり直す可能性を含めてのものだったのか、残念ながらわからない。

    ただ一つ、「Beatles recording sessions」で、Mark Lewisohnが、10/30の「Money」のstereo mixingでは、左右チャンネルに別々のmono mixを2台のテープレコーダーを使って同時再生して行ったと言う推測は、ここから出ているのだろうと思えた。

    つまり、9/30に制作された3つのpianoオーバーダブバージョンを、それぞれmono mixしなおして使った、と考えたのだろう。そうすれば、左右のチャンネルに歌が入っていることもテープレコーダーが100%同期する場合には成り立つ。なんとなく最もな考えだと思える……テープレコーダーと録音テープの性質、仕様・性能を知らなければ。

    前々回に記したが、僕もstereo/monoの同期再生をやってみた。
    その際にmono音源(初期CDから)はデジタルのピッチ編集で微妙に速度を修正して、stereo(09remaster)とほとんど同じにできたが、両チャンネルに含まれるボーカルは予想通りおかしな定位となった。
    左右の速度が完全に同期することは瞬間的には起こるが、0.数秒(0コンマ数秒)でもずれると厳密には同期しない。そうすると、ボーカルは中央に定位しない。
    これらの原因はテープの伸びや回転ムラによって録音時にも再生時にも発生する。

    僕が試しに作った同期再生stereo mixを聴くと、普通の人はもしかしたら「どこがおかしいの?」と問うかもしれない。歌が始まってからの左右チャンネルのずれは0.数秒程度。が、プロレベルではNGだろう。

    だから、左右チャンネルに別のmono mixを使って同時再生させた(できた)などと言うことはありえない。
    2台の再生スタートでさえ、手動で行うのだから・・・まぁ、だから何度もやり直しして時間がかかったとLewisohnは考えたのかもしれないが。


    さて、話を「Money」のmixingに戻そう。
    まず興味深いのは、mono mixingの行われた8/21にteke6&7の編集を行い、それを使って当日に最終のmono mixingを行っているのだが、実はその前の7/30にpianoをオーバーダブするセッションがあり、その時のtakeはtake 8~14となっていたことだ。
    要するに、7/30にpianoをオーバーダブしたマスターは、8/21には使用されなかったことになる。

    ここから推測されるのは、8/21のセッションでのtake6&7の編集の際にまたしてもpianoが付加されたと見るのが妥当だろう。あるいは、mono mixingの際に付加された可能性もある。

    そして、次は10/29のstereo mixing。
    実はここでも使われたマスターはmono mixingと同様、teke6&7を元としているとある。
    ただし、9/30に制作されたtake7を元としたpiano追加マスターにはtake番号が付加されていないので、これを使ったのか、あるいは大元のtake7を使ったのかは確定できない。

    ちなみに、先日i-Tunesで発表されたイントロなしの「Money」は、take7のmono mixとのことでpianoは付加されていない。

    次に、10/30のstereo mix。
    10/29の作業ではteke6&7を使ったとあったが、10/30はtake7のみとなっている。
    そうなると、mono mixのイントロがtake6と考えて間違いないと思うが、stereo mix用のイントロは10/30に制作したと考えられる。

    さて、ここからが僕の推測だ。
    10/29のセッションで「Money」のmixing作業が終わらなかった理由は、まさにイントロにあるのでは?と思った。

    ご存知の通り、「Money」のイントロはmonoとstereoとでミキシングだけでなく、演奏されているpianoも(同じように弾いてはいるが)別演奏だ。

    最初に作られ、mono版で採用されたtake6は、おそらく、2トラックのdrums側にスティックでカウントを刻む音が入っていたのだろう。そこで、別トラック側にpiano を録音し、monoミキシングの際に音量バランスを調整したと。

    もし、そのマスターをそのままstereoにすると、演奏側とは別トラック=歌が入ったトラックにpianoが入っていなければいけなくなる。けれども、過去に用意したpiano入りのオーバーダブマスターは、全て演奏側にpianoを録音していた。そのため、イントロ以降はpianoの入っていないtake7の元マスターに遡って作業し、stereo mixもpianoを同時演奏しながら作るしかなくなってしまった。けれども、作業時間が足りなかった。これが推測1案め。

    あるいは、9/30の録音でpianoは歌が入ったトラックに録音できていたのだが、take6と7を編集する部分でpianoの音量が変わってしまう、あるいは、テープのつなぎ目がはっきりと音でわかってしまうなどの不具合があった。だから、ここでもtake7の元マスターに遡ってpianoを同時演奏しながら作るしかなくなり、時間切れとなった。これが推測2案め。

    このように推測するのが、10/30に作業を持ち越した理由として妥当な気がする。

    そして、例のステレオミキシングについては次回に持ち越す。



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    自分の感覚としては(昔の?)ラジオDJのネット版のようなもののつもり。僕は1970年代のオーディオ全盛期の最後に属する世代で、ペアマイク持参で生録に挑戦した世代。国内盤LPが高価だったので輸入盤を買っていた、そういう中高生時代を過ごした。

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