再び、Moneyのステレオ録音について その2

    情報を整理しよう。

    アルバム『With the Beatles』用の録音セッションは7/18、7/30、9/11、9/12の4回。
    4回ともEMIスタジオのstudio 2にて行われた。
    録音は2トラック(=stereo)のレコーダーで行われている。

    さらに10/17には、初めて4トラックのレコーダーで録音。
    この時はシングル用に「I want to hold your hand」、「This boy」に加え、もう一度「You really got a hold on me」、そしてクリスマスレコード用の録音が行われた。しかし、4トラック録音の「You really got a hold on me」は早々に使わないことにされた。
    なので、この日の録音はアルバムには使用されず。


    そして、アルバムのstereo mixing作業は63年10月29日にstudio 3にて実施され、3時間で全14曲のミキシングを終えている。
    しかし、翌30日に同じくstudio 3にて3時間かけて、「Money」だけのstereo mixing作業が再度行われた。

    rectheB (7)
    *「Recording the Beatles」より、当時studio2で使われていたミキシングコンソールREDD.37

    もし「Money」の29日版 stereo mixが残っていたなら、他の曲と同様に、左チャンネルに演奏、右チャンネルに歌と追加楽器等となっていたことだろう。
    しかし結果として、G. Martinは、その仕上がりに納得しなかった。

    これは僕の推測だが、納得しなかった理由は、29日版のstereo mixの定位(=片方が演奏、片方が歌)に満足できなかったからではない気がする。
    と言うのも、片方のチャンネルに演奏、もう片方のチャンネルに歌と言う振り分けなのは、当時のミキシングコンソールの使用方法からすると仕方ないことだったし、他の曲が全てそうなっているからだ。
    同じくpianoが入っている「Not a second time」は、演奏側チャンネルにpianoが入っている。

    そのため、stereo mixの定位の見直しとは違う理由で、翌日にも再度stereo mixing作業を行おうと考えた、というのが本来の30日作業の理由ではなかろうか。

    Beatlesの演奏部分は全て終了しているので、納得しなかったのは次のような理由だと推測した。

    まず、2トラックのステレオマスターにはpianoが入っていなかった。あるいは、入っていたとすると、演奏チャンネル側に入っていた……monoミキシング用として。
    そのため、29日のミキシングで再度pianoが入っていない状態のテープを使いpianoを追加したが、それに納得できなかった。あるいは、pianoを追加で録音する作業時間がなかったため、翌日にその作業をやることにした。

    簡単に言うなら、つまりは、pianoのオーバーダビングのやり直しが第一の目的だったと僕は推測した。そしてこの場合、pianoが入っていなかったとするほうが、翌日作業する上では、より大きな理由となる。

    ただし、それだけに3時間スタジオを予約していたと考えるのも無理がある。それだけの作業にそんなに時間はかからないと思われるからだ。1時間では短いかもしれないが、2時間あれば確実に終えられるだろう。

    その点に関しては、スタジオが次の予約まで3時間空いていたので、pianoのオーバーダブだけでなく、試しにボーカルを中央に定位するようなミキシングに挑戦したとも推測できるし、あるいは、やはり当初から定位を変えたミキシングを行うことが目的で3時間予約したとも考えられなくは無い。
    個人的には前者のような気がする。

    このあたりは、残念ながら誰の証言も無いし、「Beatles recording session」にさえ、正しい作業についての記述が無いくらいだ。

    rectheB (5)
    *「Recording the Beatles」より、当時studio3で使われていたミキシングコンソールREDD.51
    *尚、64年にはstudio2もこのタイプに置き換えられる

    と、ここまで書いてから、恥ずかしながらも前言を翻すかもしれないようなセッションがあったことに気づいた。
    8/21にほとんどの曲のmono mixが完成していたが、9/30にBeatles抜きでいくつかの曲にG.Martinがダビングを施す作業と追加のmono mixingを行っている。

    そして、この時に「Money」に新たなpianoがダビングされている。
    Take7に新たなpianoを加えたものが3種類作られたとある。

    となると、これまで述べた推論のうち、10/29のmixing 作業で使用された2トラックのマスターテープにはpianoが入っていたことになる(苦笑)。

    次回は、これを元にして10/30にも追加ミキシングしようとなった理由を再度推測してみようと思う。


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    自分の感覚としては(昔の?)ラジオDJのネット版のようなもののつもり。僕は1970年代のオーディオ全盛期の最後に属する世代で、ペアマイク持参で生録に挑戦した世代。国内盤LPが高価だったので輸入盤を買っていた、そういう中高生時代を過ごした。

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