再び、Moneyのステレオ録音について その1

    先日「Moneyの録音過程が明らかになるか?」と題して、「Beatles recording sessions」に記された「Money」のステレオミックス制作作業は誤りだと書いた。

    その後、野良さんから情報をいただき、「Money」のmonoとstereoとではイントロ以降も異なるピアノ演奏が使用されているとのご意見・情報をいただいた。

    そして、重い腰を上げて、自分でもmonoとstereoの同期再生を行って確認することにした。

    以下は今回取り上げている本。
    rectheB (12)
    *左奥が「Recording sessions」の英語版(2004再販)、左手前「全曲バイブル」、右「Recording the Beatles」(僕が購入した当時は米国からの送料込みで2万円くらいだったか)


    90年代に翻訳版で登場した「Beatles recording sessions」を読んで以来、両者は同じピアノ演奏のわけがないとずっと考えてきた。
    と言うのも、mono mixは8/21に完成しているが、stereo mixは10/30に、これ1曲のために3時間を費やして行われていたからだ。
    これまで、「Money」のstereo mixに興味を持つ友人達にもそう話してきた。

    けれども、数年前に発刊された、大作であり、かなりの労作と言える「ザ・ビートルズ全曲バイブル」には、イントロを除けば両者に違いは無いと書かれてあった(*昨日ようやく本が出てきたので確認すると、イントロ以外にも、間奏前のグリッサンドされるピアノも違うと記述があった)。

    あの本をそれなりに評価していたので、僕自身、自分の考えを捨てざるを得なかった。

    しかし、昨日自分でmonoとstereoの同期再生を行い確認したところ、両者のピアノは別物だとはっきりと確認できた。

    特に間奏部分で弾いている音はmonoとstereoとで大きく異なる。
    他にstereoでは、例のリフ以外にも加わるコード、曲の構成を間違えてしまっているエラー部分などの目立つ部分がmonoと異なっている。
    つまり、基本的なリフなどは同じように弾いているが、演奏そのものが(当然ながら)別物だ。

    さらに、pianoミキシングのレベル(音量)が異なっており、これはstereo mix制作後にmonoミックスを作る場合には合わせられるが、逆の場合には全く無理な話だ。

    ここからはっきりすることは、10/30にG. Martinがピアノを追加演奏しながらstereoミキシング作業が行われた、と言う点。

    そして、2台のテープレコーダーを使わずとも、通常の1台での再生+同時演奏を別のレコーダーに録音した作業かもしれない、ということ。

    ただし、stereo mixの右チャンネルだけを聴く限り、間奏前のグリッサンドされるピアノや、間奏部分で2重になるピアノは追加ダビングされた可能性が高い。つまり、ピアノは通しで一度演奏された後、間奏のみ2つ目のピアノが追加されたのではないかと思える。

    それは、できあがったstereo mixを聴いてから追加を判断したと思われる。
    間奏にもっとパンチが欲しいなどと考えてのことだと推測される。

    その場合、間奏部分(前後を含む)だけ別のテープに追加ピアノを入れたバージョンを作り、最後にテープを切り貼りしたと考えるのが、音質劣化を防ぐ意味でも、やり直しの手間を減らす意味でも、最も採用された可能性が高い。グリッサンドされるピアノが如何にも編集っぽく入ってくることからしても、このやり方ではなかろうか。(あるいは、別のテープレコーダーでこの部分のみ再生しながらミキシングする手もあるが……。)


    このように、「Money」のstereo mixの制作作業についてあれこれ考えをまとめてみたが、この曲のstereo mixの作業に関心のある人にとっての最大の関心事は、「どうしてこの1曲の作業にそれほどの時間がかかったのか?」ということだと思う。

    いや、他にも「どうしてこの曲だけボーカルが中央に定位できたのか?」であったり「どうして他の曲もボーカルを中央に定位させなかったのか?」であったりするかもしれない。
    と言うか、録音に関心の無い普通のBeatlesファンにとっては、こっちの方が重要なのかもしれない(苦笑)。


    その答えを導き出す鍵は、かなり昔に(この記事の中で)紹介した録音ファン必見(笑)の大著「Recording the Beatles」にあるわけだが、そのあたりを考えるには、機材についての知識が多少必要となる。

    今回はここまでとする。




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    自分の感覚としては(昔の?)ラジオDJのネット版のようなもののつもり。僕は1970年代のオーディオ全盛期の最後に属する世代で、ペアマイク持参で生録に挑戦した世代。国内盤LPが高価だったので輸入盤を買っていた、そういう中高生時代を過ごした。

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