In a silent way

    このアルバムを初めて聴いた時は、スリリングでありながら、同時に静けさを感じた。
    独自の音世界に飲み込まれるのでなく、聞き手としての僕は、時々青い光で照らされる暗い室内プールの上に浮かび漂うような、不思議な浮遊感覚を得た。
    *書いていて気づいたが、まるで『Undercurrent』のジャケットみたい(苦笑)
     あれよりも体が浮いていて、青い光はもっと部分的に当たっている印象だ。

    おそらく人それぞれ、独自の印象があるのではなかろうか。
    そういう気がしてしまうこの作品は、先日買ったMiles DavisのMFSL盤。
    オリジナルはelectric Milesの時代、1969年7月発表の『In a silent way』。

    iswtop (4)


    このアルバムの意外性と言うか面白さを作り出しているのは、Producer、Teo Maceroによる楽曲編集。
    編集以前に演奏そのものが良いことは言うまでもないが。

    編集とは文字通り、テープを切り貼りする編集だ。
    今ならPro tools上で各トラックを簡単にコピペできるのだが。

    思わぬところでtape編集がなされ、その意外性がとても楽しい。
    このような編集手法による作品発表は、このアルバム以降もいくつか続いたはず。
    それ以前のアルバムではなかったのではなかろうか。

    編集と言っても普通の編集ではない。例えば、ライブ録音のあるパートだけカットするなどは普通に行われていたし、曲を短くするための編集なども普通に行われていた。

    でも、ここで行われた編集は、何とも形容のしがたい、違和感あるいは驚きや意外性を与える編集だ。ある意味、即興演奏に呼応した即興編集(笑)。

    isw (11)


    このアルバムより数ヶ月後に出たBeatlesの『Abbey road』でも、B面のメドレーの曲順は意外性を狙ったテープ編集により行われた。具体的な作業はよく知られているので詳しく書く気は毛頭無いが、その話を「Beatles recording session」で知った時は驚いた。

    しかしその後、『In a silent way』を聴き(知り)、それ以上に驚かされたのだった。
    *話は逸れるが、Mothers of Inventionの『Freak Out!』や『Absolutely Free』の編集も見事だ。


    さて、僕が最初に買ったのは米国盤CDだったと思う。
    その後、LPも探して購入し、初期SACDでも購入した。

    このアルバム、やはり一番よく聴いたのは、最初に買ったCDだった。
    つまり、初めて聞いた頃だ。不思議な浮遊感を感じるこの作品、一度はまると何度も繰り返し聴きたくなってしまった。CDをrepeat再生させて聴いていたものだ。

    音質的には、初期SACDがとても良かった。ハイブリッド盤は持っていない。

    しかし今回、MFSL盤との比較はオリジナル米国盤(CS9875)。
    iswtop (8)

    ジャケットはぼろいが、レコードはきれいな方だ。

    オーディオファイル向けの音盤では、わざとHi-fi調にイコライジングしたものもあるが(初期のDVD-Audioソフトなど)、MFSL盤は、これまで紹介した2枚と同様、特に帯域レンジを広く見せる(思わせる)ようなイコライジングは施されていないように思える。

    中音域にほどよい厚みがある。Side-2冒頭ではオリジナルソースに依拠するヒズノイズもしっかりと聴こえる。

    オリジナル盤は、MFSL盤よりもシンバルの音など少し粗く、全体的に歪みが多い印象。MFSL盤よりもややハイ上がりで中音域は薄い。
    ただ、空気感と言うか、空間再現はオリジナル盤のほうが微妙に優れている気がする。あるいは、左右の広がり具合が広いと言うか。

    isw (4)


    今回の2種での比較では、MFSL盤で劇的に音質が向上したような印象は無いが、全体的に歪感が無くなり、質感は向上していると思える。
    ただ、CDやSACDでもオリジナルLPにあるような歪感は記憶にないのだが。
    *比較に際して、カートリッジはP-3Gで聴いた。

    現在の相場でのオリジナル盤の中古価格>MFSL盤(新品)かもしれないので、価格を考えるとMFSL盤LPはお勧めだろう。

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    自分の感覚としては(昔の?)ラジオDJのネット版のようなもののつもり。僕は1970年代のオーディオ全盛期の最後に属する世代で、ペアマイク持参で生録に挑戦した世代。国内盤LPが高価だったので輸入盤を買っていた、そういう中高生時代を過ごした。

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