マスターテープの音と1stプレスの音 Arthur/Kinks

    昨年新品で購入したLPの中にKinksの名盤『Arthur or the Decline and fall of the British Empire(以下は略してArthur)』の2LP仕様がある。

    arthur (7)

    これは2011年にDE版として登場した『Arthur』のRemaster 2枚組CDのマスターを使用してプレスされたと思われ、当初はRecord store day用商品だったようだ。

    僕の買ったのはジャケット裏右上のナンバリングが無くなった2ndプレス(だと思う)。


    KinksのDE版CDシリーズの音質は、それ以前のCDから確実に1ランクは向上したように思った。

    オリジナルの英国アナログ盤(LPやシングル)と比較しても明かにマスターテープに近いと思われるフレッシュなサウンドに驚かされた。
    マスターに近い音を求めるのならオリジナルのアナログよりもDE版と言うのが僕個人の評価だった。

    arthur (1)
    *DE盤らしき2LPは内袋に解説や写真、インサートのレプリカが

    しかし、それでも持ってるオリジナル盤を手放せないのには理由がある。

    arthur (14)
    *英国初版

    『Arthur』の英国オリジナル盤の初版は、低音がズシンと沈むようなとても重厚な音作りでカッティングがなされているのだ。それはマスターテープに記録されていたものをフラットにカッティングしたものとは違う。
    *今回の話は全てStereo盤に関するもの

    僕は『Arthur』の各国盤を集めていたのだが、英国初版と同じような音作りをしている盤は他にはなかった。たいてい、低域がもっと軽かった。それはドイツ盤や豪州盤で聴ける音だ。また、日本再発盤(テイチク盤)も似た傾向だ。
    *フランス盤も持っていたが、盤質が悪すぎて判断できなかった。

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    *ドイツ盤
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    *オーストラリア盤
    arthur (28)
    *国内再発テイチク盤

    米国盤は低域が軽いだけと言うよりも、マスターの世代が1世代進んでいるような音だった。ラフに聴くには問題ないが。
    arthur (34)
    *米国盤

    それに対して、英国初版に近い低域を再現しているのが、盤以外の全てを英国から輸入していた日本コロムビアからの国内初版。

    arthur (25)
    *国内初版はジャケット、インサート、内袋が英国製、盤と解説のみ日本製

    ただしこちらは、低域は良いが高域が出ておらず、英国盤以上に暗いイメージの音になっている。
    けれども、その点を除けば音質は英国初版に非常に近く、トーンコントロールで高域を上げて聴けば満足できる。

    このような傾向があって、数年前まで僕は『Arthur』は英国初版が最高の音だと決め付けていた。但し、その後80年初頭の再発盤も確認したところ、英国初版に近い音でなおかつ低域にも明るさを感じられる音質だった。不思議だったのでマトリクスを確認したら、初版と同一だった。つまりプレス時期の違いによる音質差なのだ。

    arthur (31)
    *80年頃の英国再発盤、ジャケットは表のみコーティングありのシングルジャケット

    また、80年代後半の英国再発盤を聴くとドイツ盤等と同様の軽い低域だ。しかし、これはこれで良い音だと思っている。(実は、僕はこの時のシリーズのLPの音をそれなりに評価している。)

    arthur (37)
    *CD化に伴って再発されたと思われる80年代後半の再発盤

    そして2011年にDE版CDが登場し、英国初版が独特な音をしている理由が推測できた。

    わかりやすい例えを出せば、BeatlesのRemaster Mono BoxのCDがアナログのモノラル盤の音を再現していなかったのと同様、マスターテープの音とプレスされたレコードの音は違っていた……そういうことだったのだろうと思った。

    DE版2枚組LPのステレオ盤もやはり英国初版ほどの低域ではなかった。
    つまり、マスターテープにはそれほどまでに強い低域は記録されておらず。
    誤解の無い様にしたいので補足しておくが、低い音域までしっかりと記録されている。けれども、低音域を強調した音のバランスにはなっていないのだ。強調された低域はカッティングの際に補正(補強)されてレコードに刻まれていたわけだ。

    だから、英国から送られたマスターテープ(英国盤と同一のジェネレーションかどうかは不明)を使ってそれぞれカッティングされた各国盤は、送られたテープの音を基準にカッティングしたと思われ、低域補正などなされておらずだった。

    不思議なのは日本初版のみだが、もしかするとマスターテープとセットでLPのサンプルも届いていたのかもしれない。それでサンプルLPの音に似るようにカッティングしたのではなかろうか?(100%推測であり、音以外に何の根拠も無い)。

    ただ、前述した各国盤は全て発売国でのジャケット製造なのに対して、国内初版だけは英国製のもの(インサートも)を輸入して使用していたことから、LPそのものをサンプルとして受け取っていて、盤以外は全て英国製を使用する判断を下したのではなかろうか?まぁ、これも推測なのだが(笑)。


    ところで、DE版(マスターらしき)2012年プレスの2枚組LPは、1枚がステレオ、1枚がモノとなっていて、CDに収録された追加トラックの類は一切入っていない。
    アナログはあくまでアルバム単体を復刻したものとなっている。
    それは、同時期に発売されていたKinksのDE版2LP(数タイトルしかないが)も同様だ。

    arthur (4)
    *『Arthur』は白いカラーレコード



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    自分の感覚としては(昔の?)ラジオDJのネット版のようなもののつもり。僕は1970年代のオーディオ全盛期の最後に属する世代で、ペアマイク持参で生録に挑戦した世代。国内盤LPが高価だったので輸入盤を買っていた、そういう中高生時代を過ごした。

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