Beatles Stereo LPボックス 音質評価 その5 『Magical mystery tour』

    昨日取り上げた『Beatles for sale』よりも、これまで音質評価で記してきた「逆効果」影響の少ないタイトルは『Magical mystery tour』だった。

    何よりも、A面、B面のラストの曲でのEQ補正による逆効果が、極めて少ないように思えた。

    今回比較に用意したLPは、有名なドイツ盤(SHZE327、B面はステレオ音源)、英国盤(純正アナログマスターPCTC255、マトは両面1)、MFSL盤、そしてリマスターLPの4枚。
    * ちなみに、今回のリマスターLPとの比較で聴いているMFSL盤はMFSLボックスセットからで、単体発売LPではない。



    ドイツ盤は音質が非常に良い、と英国盤PCTC255を手に入れるまでずっと思っていたが、A面に関しては英国盤の方を今では支持している。

    カッティングレベルが大きいため、それだけでも英国盤の方が良い音に聴こえるが、音量を合わせて比較しても、低音域の鳴り具合が大きく違っていて、ドイツ盤以上にHi-Fiな音を聴くことができる。

    同じく米国盤マスターを使用しているはずのMFSL盤(B面は米国盤同様、擬似ステレオ曲が混ざる)よりも英国盤のほうがふくよかな低音をしているように聴こえるのが非常に不思議だ。

    ただし、音質のグレードは明らかにMFSL>英国盤となる。これぞマスターテープの世代が1~2世代ほど違うと思える。

    ただし、やはり音の傾向はこれら2枚は低音を除けば非常に良く似ている。
    本来のアメリカ盤LPが持っていた、きつめと言うか固めにイコライジングされた音を持ち合わせており、両者を比較すると、本来のマスターは同じなのだろうなと思えてしまう。

    ここまで記してから気がついた。MFSL盤のジャケットはマスターテープの写真だったのだ!

    見てみると、使用されたマスターテープは英国LP向けで76年9月12日に用意されたものとわかる。MFSL社がテープを借り受けした時点は、1980年以降ということになる。
    恐らく、本当に同じマスターテープなのだろう。

    それにしても、同じマスターからのリマスタリングで、音がこれほどまでにクリアになっていくと言うのは、レギュラー盤の製造工程で如何に音質が損なわれるかがよくわかる。
    その反面、低域がどうして違うのか?不思議だ。

    これら2枚のA面と、ドイツ盤のA面を聴いた後に、リマスターLPを聴くと、正直なところMFSL盤よりもさらに1世代は音が若返ったのではないかと思えるほどに音が良い。

    特に、A-2では、マルチトラックマスターに遡ってremixされたのではないか?と見間違う(聴き間違う!)ほどに音がよくて、Paulがすぐそこで歌っているかのように聴こえる。

    音の傾向は、しかしながら、英国盤、MFSL盤に見られたような、アメリカ盤っぽい傾向ではない。恐らく、英国EP用のマスターを元に作られているのだろう。
    実際に、A-6「I am the walrus」は、英国ステレオミックス(旧CDも)が採用されており、それに対してMFSL盤、英国盤、ドイツ盤はどれも基本的には米国ステレオミックスだ(但し、ドイツ盤だけイントロが6回)。

    リマスター盤A面のEQ操作だが、やはり多少なりとも行われている。けれども、全体を通じて、聴くのが嫌になるほどではないため、違和感がとても少ない。
    逆に、EQ操作なしだったなら(アナログ的な歪は正直慣れているので)、どれほど素晴らしい音だったろう!と思えてしまう。


    B面については、MFSL盤、英国盤は冒頭の2曲のみステレオ、残る3曲は擬似ステレオ。さらにB-2は米国ステレオミックスとなっている。
    それに対して、ドイツ盤とリマスター盤はどちらも同一のステレオミックスを使用している模様。そのため、比較はドイツ盤となってしまう。

    リマスター盤はB-1からEQ操作がわかってしまうが、こちらの面も解像度の高いハイレゾ感のある素晴らしい音質だと思う。

    声以外に声と似たような音域を持つ楽器が多く入っていれば、EQ操作には気がつくが、違和感ありありの音にはなっていないみたいだ。

    B面全体を通して気になったのは、声の帯域がちょっといじられている気がするのと、B-4の面白い音を鳴らしている(たぶん)ギターの音や、特定の帯域が引っ込んだかなと言う点。

    B-5に至っては、EQ操作ではどうしようも無かったのか?Johnのボーカルは若干歪んだままに聴こえる。
    EQ操作の割合が少なかったのか、違和感があまりなく聴ける。
    他のアルバムも全てそうして欲しかったのだが。

    これまでEQ操作を逆効果と書いていたが、効果ありと思えたのが、B-5のイントロのコーラス。
    どのアルバムを聴いても3度目の(=最後の)コーラスで左チャンネルの音が必ず歪んでいたのが、ここでは目立たなく処理されている。

    このように、B面に関しても処理は行われているものの、全体を通しての音質への悪影響は少なめだと思えた。


    今のところ、しっかりと比較しながら聴いた中では、MMTが最も全体を通して違和感が少なく、音質的にも優れるタイトルだと思う。





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    テーマ : 洋楽ロック
    ジャンル : 音楽

    コメント

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    MMTのリマスターはよかったですね

    いつも楽しく拝見しています。今回のリマスターLP、いろいろありますね。おっしゃる通り解像度の高さはハイレゾを彷彿とさせるものがありますが、高域のEQ操作が裏目に出ているのも事実。ショーン・マギーの努力には敬服しますが、これがもしバーニー・グランドマンかスティーヴ・ホフマンの仕事だったら?とタブーなことに思いを馳せてしまいます(笑)。

    拙ブログでリンクさせていただきました。よろしくお願いいたします。

    Re: MMTのリマスターはよかったですね

    路傍の石さん、こんばんは。
    コメントどうもありがとうございます。

    僕も路傍さんのブログはずっと拝見していました。
    本当に今回のリマスターLPは、いろいろあって、この音をどう捉えていいのやら最初は困惑しました。

    >ショーン・マギーの努力には敬服しますが、

    リマスターLPから極力アナログ盤特有の歪を消し去り、大元のハイレゾ音質を届けたいと言う考え自体は僕も評価しますが、対処方法が悪かったのではないかと思いました。
    結局、出てくる音はEQ操作すればするほど違和感のある音だと思います。

    >これがもしバーニー・グランドマンかスティーヴ・ホフマンの仕事だったら?とタブーなことに思いを馳せてしまいます(笑)。

    同感です。
    実際、高音質レコードのプレスは、職人芸的なカッティング技術で歪をほとんど感じないようなレベルにまで来ているように思えます。それを、EQ操作でやり過ごそうとしたところが、今回のLPでは確実に裏目に出ていると思います。
    来年発売予定のMono ボックスでは、何も余計なことはしないで欲しいです。

    >拙ブログでリンクさせていただきました。よろしくお願いいたします。

    どうもありがとうございます。こちらもリンクさせていただきます。
    こちらこそ、よろしくお願いいたします。
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    Author:JD
    自分の感覚としては(昔の?)ラジオDJのネット版のようなもののつもり。僕は1970年代のオーディオ全盛期の最後に属する世代で、ペアマイク持参で生録に挑戦した世代。国内盤LPが高価だったので輸入盤を買っていた、そういう中高生時代を過ごした。

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