Beatles Stereo LPボックス 音質評価 その2

    追記:
    この記事は「音質評価 その1」の続きとなっているので、最初はあちらをどうぞ。


    僕は、長い文章を記したブログが苦手で、興味のあることが書かれてあっても、長いと読むのを嫌になってしまうたちだ。

    だから長くならないようにA4で2枚程度の文章と決めているのだが、今回はそうはいかなかったことをお断りしておく。

    以下は、当然ながら僕の使用しているオーディオで聴いた印象であって、他のシステムでも全く同じになるかどうかはわからない。そこには、リスナーの耳も加わるわけだし。
    その前提で読んでもらえればと思う。


    まず、昨日今日の印象のみ箇条書きで記す。

    ・ 全アルバムを通じて、(僕にとっては)大きな疑問の残る音質と言うか、音作りがなされている。その疑問については、最後に述べる。
    ・ Revolverまでは、およそ想定範囲内の音質で、少なくともCD並。品位の高い音。
    ・ SGTから印象が大きく変わり、かなり好印象。ハイレゾっぽい音になった気がした。それは、『Let it be』まで同様。『Past masters』のSide3は除く。
    ・ 『Past masters』は2枚組でなく3枚組にすべきではなかったか?Side3が音質的にかなり不利なカッティング。あるいは、Side1やSide 2をもう1曲ずつ増やし、その分Side3から頭の2曲を減らしても良かったのではなかろうか。過去のLPリリースに合わせた収録曲順を採用したのが失敗だ。音質はもっとアップできたはず。
    ・ 1986 remixを採用した2枚のLPは、疑問の対象外。これらは、同じ音作りをしていない(つまり難を逃れた)気がしたが、これまでもちゃんと聴いていないので評価外とした。

    そして、箇条書きの最初で述べた“疑問”についてこれから述べていく。

    実は、この疑問に思えた音作りのせいで、今回のLPの音質はかなり聴きづらい音質になったと思った。
    それは、高音域へのノイズリダクション(あるいは、フィルター処理?)によるものだ。
    曲によっては、高域が引っ込んでしまっていて、非常に不自然な音作りになっている。
    なぜそんな処理を行ったのだろうか?疑問しか浮かばない。

    しかもしっかりと聴くと、このノイズリダクション処理は、かなり狭い帯域あるいは特定のノイズ成分にのみ働いているように思われる。しかしながら、そのノイズ成分と判断された音こそ、実は全体の音傾向に影響するとても重要な部分なのだ!

    つまり、その処理のせいで、声やピアノ、エレキギター、アコギ、スネアドラムなどの艶っぽい音や響きがマスクされてしまっている。それらの音が引っ込んでしまっている。
    さらには、スタジオの空気成分の音までもマスクされていることになる。


    エンジニアは音を生き生きとさせるためにいろんなテクニックを使うものだが、今回の処理は全く逆を行っているように思える。特定の音の響きが死んでいるのだから。

    ただし、アルバムごと、あるいはアルバムの中でも曲ごとに、その効果(この場合は逆効果だが)が違っているように思える。いや、もしかすると1曲の中でも効果が変化しているようにも聴こえる。このあたり、非常に困惑してしまう。(Pro Toolsのプラグインで何かそういうエフェクトがあったろうか?)

    ちなみに、今回のマスターにはリミッター処理を施していないのだが、デジタルでのリミッター処理を施さないこととノイズリダクション処理とは僕の知る限りは関係がない。

    ただ、1曲の中で処理が変化しているように聴こえるのは、なんらかのエフェクトを使った結果のように思える。リミッターをかけることで聴こえ方が変わるのは良くわかるが、リミッターをかけないわけだし。


    そこで参考のために久しぶりに09 remaster CDを比較用に聴いたが、こちらは全体的にはノイズ除去処理を行っているものの、LPと同じノイズリダクションは行っていない。若干高域は強めに聴こえるが、大事な音成分は残っている。

    これを聴いた後にLPを聴くと、今回のLPに施された処理は不要だったと思える。曲によっては、完全に音が変えられてしまい、聴きづらいものもあった。

    さっと一通り聴いた中で特に気になったのは「Boys」と「I want you」だ。
    どちらもおかしな音質になってしまっている。
    「Boys」は高域がぎくしゃくして聞こえ、「I want you」はぬるい音になり、後半のシンセによるノイズをサウンドに取り入れた部分では、本来の意図が伝わらない気がする。とても眠い音になっている。あの音は駄目だ。
    *安価プレーヤーでは、「Boys」の高域のぎくしゃくする変化はわからなかった。しかし、その後の「Please please me」では高域が不足していることがはっきりとわかった。


    僕は例のUSBメモリー音源は持っていないのだが(聴く手段もないし)、おそらくLPに行われたノイズリダクション処理は行われていないと思われる。
    と言うのも今回のLPを聴く限り、あの処理を施すとハイレゾの価値が半減とはいかないまでも、ある程度価値を下げると思われるほど、空間表現や生々しさが損なわれているように思える。

    もし仮にCDのやや強めに聴こえる高域を是正しようとしてあの処理を施していたとすれば、現状の25%程度でとどめるべきだったろう。その結果として、再生音は現状のLPの音とCDの音の中間ぐらいにおさまったと思われる。


    不思議なのは、テストプレスまで実施してLPのプレス音質を評価したと言う話。
    にもかかわらず気づかなかったのだろうか?スタジオエンジニアはたいてい大音量(本当に大音量だ)に慣れているため、家庭で聞く音量で評価してしまい気づかなかったとか?あるいは、注意が別のところに行っていたとか?

    いやそれどころか、ラッカー盤をカットする際にあの処理を施したと考えるよりも、デジタル音源にあらかじめあの処理を施したものをマスターとして使ったように思われるが。そのほうが、マスターを用意する上では作業がしやすい。しかし、その時点で不自然な音に思えて当然なのだが。

    高齢になれば、高域が聴こえなくなるが、あの帯域は聴こえづらい周波数ではないと思えるし、一体どうしてあんな音になってしまったのだろう?不思議で仕方がないし、今回のLPの音質を明らかに悪くしていると思われる。

    でも、LP用にはsやtなどの発音部分の歪が出ないように、特別にEQを追加したと言う公式発表があり(付属のブックレットにも記載)、もしかしたら、そのせいなのかなとも思える。もしそうだったなら、それと引き換えに失ったものはあまりにも大きい。

    その他にも不思議なのは、米国のネット記事では、今回のLPとMFSL盤、そして79年ごろの英国プレスとの試聴比較を高級なオーディオセットを使って行っており、その中では僕が感じた指摘が出ておらず。

    と言うか、79年プレスとも一部音質比較したが、今回のプレスのほうがさらにヴェールが剥がれた音になっていて、少なくとも以前の音は、1世代はジェネレーションが劣るマスターを聞いている気がする。
    そういう意味で今回のLPは、やはりハイレゾを聴いている感覚がある。

    もしかしたら、処理が裏目に出た曲で比較していないのかもしれないが、一聴すると全体的に高域が弱く聴こえるので、これまでとは違う音傾向だと気づくと思うのだが。

    オーディオ評論家が参加していなかったのだろうか?それならば、79年プレスを聴いても、自宅で聞くよりも良い音に聴こえ、オーディオ的な音質評価にはなっていない。
    自分の求める音傾向を選んでいるだけなのかもしれない。


    脱線してしまったが、あのおかしな処理がなければ、今回のプレスを最終プレスとすると決まったとしても、受け入れられたと思う。ところが、これでは駄目だ。やり直して欲しい。

    何よりも、せっかくハイレゾに近づいたLPが製造されると思っていたし、そうできたはずなのに、この結果とは……。余計なことをして1位を逃した気分。

    音質の総合評価として本来の比較は、旧CDマスターLP < 新マスターLP になると思う。

    が、アナログマスターを使用した従来の盤との比較となっても解像度は今回のほうが明らかに良い。クリアと言うだけでなく、音の定位もはっきりし、マスターテープに近づいた音になった。

    ただし、初期タイトルは、CDと同様に左右のバランスを調整しており、好き嫌いが分かれるかもしれない。さらに、「A hard days night」はこれもCDと同様、イントロの音は高域をカットしてある。


    それにしても、何度も言ってしまい申し訳ないが、あの処理さえなければ、過去最高峰の音質あるいは、最高峰に並ぶLPだったはず。


    同じ一点について、くどくどと書いてきても僕のがっかり感はおさまらない。
    もしかすると、いわゆるアナログっぽい音を狙ってわざと眠い音にしてしまったのではないか?と勘ぐりたくなってきた。

    でも、現状でも特に悪い曲を除けば、一般的には許容範囲なのかもしれない。
    それに、曲によって逆効果が際立つ曲とそうでない曲とに分かれるし。それでもオリジナルと比較すると、指摘部分はやはり処理されているとわかる。

    それに、僕がこれまで書いたような印象を受けない人もいるかもしれない。
    ただ、ネット記事を読む限り、皆さん高域がおとなしい点は気づいているようだ。


    本当に「あ~あ・・・・・・」と言った感じ。
    最初からこのがっかり感を抱かなくて済むカッティングにできたはずとわかるだけに悔しい。
    同じことしか浮かばないので、ここで閉じる。


    関連記事
    スポンサーサイト

    テーマ : オーディオ
    ジャンル : 音楽

    コメント

    Secret

    プロフィール

    JD

    Author:JD
    自分の感覚としては(昔の?)ラジオDJのネット版のようなもののつもり。僕は1970年代のオーディオ全盛期の最後に属する世代で、ペアマイク持参で生録に挑戦した世代。国内盤LPが高価だったので輸入盤を買っていた、そういう中高生時代を過ごした。

    最新記事
    最新コメント
    最新トラックバック
    月別アーカイブ
    カテゴリ
    カレンダー
    03 | 2017/04 | 05
    - - - - - - 1
    2 3 4 5 6 7 8
    9 10 11 12 13 14 15
    16 17 18 19 20 21 22
    23 24 25 26 27 28 29
    30 - - - - - -
    検索フォーム
    RSSリンクの表示
    リンク
    ブロとも申請フォーム

    この人とブロともになる

    QRコード
    QR