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    ライブステージを作るか再現するか ~スピーカーの性格区分~

    ※はじめに、以下に記すスピーカーの性格の区分けは、あくまでわかりやすくしているだけで、中間に位置する商品(製品)もあるだろうことは承知して欲しい


    先日、少し前のステレオサウンド誌を見ていたら、ある広告のキャッチコピーに〝ライブステージが眼前に広がる〟みたいなのがあって、これは考えさせられるなぁと思った。

    と言うのも、スピーカーの性格の違いによって、大きく分ければ、ライブステージを「作るスピーカー」と「再現するスピーカー」の2つに分かれるからだ。



    僕が昔(90年代半ばまで)使っていた国産の売れ筋価格帯のスピーカー(2本セットで12万円ほど)は、3wayで30cm近いウーハーを持つ、今の感覚で言うなら面で聞かせるタイプだった。

    伝統的なスピーカー、たとえば僕の世代にもまだ人気のあるJBLやタンノイの80年代初頭ぐらいまでの設計のスピーカーは同じ系列だと言える。(現在も後継機種が出ている。)

    このタイプはまさにスピーカーから、録音された楽器の音が生々しく飛び出すタイプだ。

    それに対して、CD時代以降、さらにはCDを超えるDVD-AやSACD時代に合わせて新たに設計されたスピーカーには、いわゆる〝スピーカーが消える〟タイプがある。
    このタイプは録音された楽器だけでなく、その楽器の周りの空間までも(再生条件が整えば)再現するタイプだ。

    現実の商品(製品)は無視して、わかりやすいように2分するなら、前者はライブステージを「作るスピーカー」であり、後者はライブステージを「再現するスピーカー」となる。
    例えるなら、前者は演奏者の代わりになり、後者は収録スタジオやホールをこの場に再現する、とでもいえようか。

    実は僕は、90年代の後半まで、オーディオ再生に後者のような再生が存在することなど知らなかった。

    だから、前者のスピーカー2台を使って、それぞれから放たれる音の放射がぴたりと合う位置(当時は正三角形とか二等辺三角形とか言われていた)で聴くことでステレオイメージが生まれるとずっと思っていた。
    2本のスピーカーで音場を作るのがステレオ再生だと思っていた。

    実際、ロックのような、オンマイク中心で楽器の音をモノラル収録し、ミキシングの際にモノラル音源を左~中~右に配置することで音像を作る音楽(つまり、マルチのモノラル録音)だと少なくとも後者のスピーカーは必要ないと思えなくもない。
    それぞれの楽器の音は基本モノラルなのだから、エンジニアが定位させた位置で聴ければ正しく配置されているわけで。

    でも、90年代半ばからジャズやクラシックも聴き始めると、特にクラシック録音に関しては、なんだか良い音に聞こえずじまいだった。

    で、そんな時にステレオサウンドを読み始めて、初めて後者=新たなオーディオ再生を知ったわけだ。
    とは言え、ステレオサウンドの執筆陣全員が後者の再生だけを評価しているわけでなく、皆さんそれぞれに好みはあるように思えるが。

    わざと大げさに言うが、後者が優れている点があるとすれば、前者では聴けない空間が聴けるというか見えることに尽きる気がする。

    でも、それが叶うのは、再生条件が整っている前提は崩せないが、音源そのものにそういう立体的な空間までもが収録されていること。当然だけれど。
    となると、60年代や70年代のロックではあまり意味がない……とも言えない。

    長々とここまで引っ張ったのは、先日から取り上げている『The Who by numbers』につなげるためだった(笑)。

    Glyn Johnsの録音は、DrumsやPianoの録音を極力生音でステレオ収録していて、他のエンジニアの行うマルチマイク録音、つまりマルチモノラル的な音とは完全に別物だ。
    だから、Glyn Johnsの録音をベストな状態で再生するには、後者の方が向いていると僕は思っている。

    以前、カッティングマスターを聴くイベントに参加したときも、使用されていたのがPA用のスピーカー(当然、前者になる)だったから、あの生な収録空間は再現されなかった。逆にJimi Hendrixはうまい具合に音場を作れていた。

    『The Who by numbers』を良い音で再生するには「再現するスピーカー」を使うこと、これが言いたかった(笑)。
    特に、Pianoの入った曲がわかりやすい。


    Beatlesの1stアルバム『Please please me』のステレオ盤も後者で再生したほうが前者よりもずっと良い。大本がステレオの一発録音を元に若干のダビング仕上げなので(本来は、モノラルミックスする前提でのステレオ録音だからクラシック等のステレオ録音とは狙った音像が異なるものの、ステレオ効果は確実にある!)。2nd以降は残念ながら・・・だ。
    あるいは、それこそGlyn Johns録音の「Get back/Don't let me down」、アルバム『Let it be』あたりか。

    ただし、『Please please me』は09remasterされる前のアナログ・ステレオマスターを使用した盤が良い。英国ステレオ盤、MFSL盤とか。
    あと、Vee-Jayの本物の『Introducing…』ステレオ盤はとても良い。


    そうそう、言い忘れたが、Glyn Johnsの録音はアーティストがスタジオで生み出す音をそのまま収録するのに近いので、再生音量も必然的に大きめの音量にしないことにはしょぼい音に聞こえてしまう。特にロックは加工された音の盤の方が多いので、それらと同じ感覚では聴けない。
    僕なぞ、いつの間にかラウドなマスタリングは本当に受けつけなくなってしまった。






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    テーマ : オーディオ
    ジャンル : 音楽

    tag : ステレオ stereo オーディオ スピーカー loud speaker

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    Author:JD
    自分の感覚としては(昔の?)ラジオDJのネット版のようなもののつもり。今日本では7インチ「シングル」盤のことを誤って「EP」と表示するような有様となり、言葉の不理解と誤用の蔓延に落胆している。「EP」は「シングル(=片面1曲、両面で2曲収録)」よりも曲数を多く収録する(標準は4曲、3曲や5曲や6曲の場合もあり)意味のExtended Playingの略。どうかシングル盤とEPとを正しく使い分けて欲しい。

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