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    今も音圧命?

    たぶん現在も続いているloudness war。
    その指摘を僕が初めて知ったのは2007年、Stereo Sound誌掲載の嶋護さんの連載記事『嶋護の一枚』だった。

    shimamorinoissatu.jpg
    *こちらは2012年掲載までの連載記事をまとめて出版されたもの(書下ろしあり)

    でも、いまだにAmazonのレビューには「音圧!」「音圧!」と言う希望の声が目立つ気がする。



    そもそも音圧が高いという言葉の本来の意味は、「音が大きい」ということだった。

    クラシック曲の録音での音量最大部分がデジタルで0dbであれば、デジタルメディアの規格内での最大音量なのだから、そのCDは音が大きいことになる……はず。

    交響曲のようなダイナミックレンジの大きい録音の場合、最低音量部分は音量が小さい。だからこそ、緩急、つまり勢いやゆるやかさ、おだやかさ、雄大さ、壮大さ、そして盛り上がりへいたるまでのゾクゾクさせる音・音楽表現ができるわけで、それが常に音量一定ならば残念ながらヘタクソ、あるいは表現力がないといわざるを得ない。

    ところが、loudness warに乗っかったCDのマスタリングは、ダイナミックレンジは無視して常に音量最大を目指したものだった。デジタル音源に変換後、デジタル処理で音を圧縮(拡張も)して常に音量が最大値になるようなマスタリングを施している。

    それによって、本来音量が小さくなる部分は音量が持ち上げられ、音が盛り上がって大きくなる部分は、それほど音量に変化は生じないので圧縮感が強くなるだけ。あるいは過去に紹介したこのCDのように瞬間的に音が炸裂するような録音・演奏は逆にそこで圧縮がかかって音が小さくなるという逆転現象も起こる(苦笑)。

    当初は、Rock/Popsの音源がメインターゲットとされていた。これらはミキシングによって音を加工して作り上げる=ミキシングコンソールで作り上げるので、そのようなマスタリング作業もスタジオ作業の延長線上にあったのかもしれない。が、いつの間にか、セッション主体、生録音主体のJazzまでも同様のマスタリングに傾斜していた。だから、オーディオファイルの間から警鐘が鳴らされたわけだ。

    そして現在でも、冒頭に述べたような「音圧!」を求める声は、同様にダイナミックレンジを無視して常に音量最大を求めているような気がする(それらのCDは海苔のような波形分布なので、海苔波形と呼ばれると遅ればせながら昨年知った)。

    でも、どうしていい大人が今も「音圧!」を求めるのか?と言うのが僕には不思議なところ。

    いい大人がと書いたのは、僕が購入するようなold Rockのレコード/CDの購買層って、僕と似たような世代(40~60代)だからだ。そのような作品のレビュー欄しか読まないので、「音圧!」を求める声は似た世代から上がっているはず。だから、不思議なのだった。

    再生音量を上げることができるなら、どう聴いてもダイナミックレンジ重視のレコード/CD/SACDの方が演奏者の表現をしっかりと伝えてくれるわけで。

    もし、通勤列車のような騒々しいところで音楽を聞いて、少しでも気軽になりたいと望むならわからなくもない。でも、それならmp3とか最初から圧縮音源を購入すれば良いはず。ところが、音圧を求める声はレコードやCDのレビュー欄にある。となると、そのような声をあげている人は、それこそ自分のオーディオで音楽を聴いているのではないか?そして、購入するレコードやCDに圧縮した音を求めているのではないか?と思えてしまう。だから不思議で仕方がない。

    もしかすると、オーディオ装置でかなり小さな音量で聴いているのかな?と想像してしまう。でもそれは住宅事情が問題であって、それをソフトの音圧に求めるのは違う気がするが……。

    さすがにクラシック作品のレビュー欄でそんなことを書いてるのは見たことがないので救われている。

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    テーマ : オーディオ
    ジャンル : 音楽

    tag : レコード LP 音圧 オーディオ loudness war

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    No title

    昨今のレコードブームで元来のオーディオ好き以外が入ってきているので、レビューの判断は難しい所です。
    オーディオに興味ない人が音楽を聴くといったら通勤通学の時間がメインでしょうから、外部の騒音に負けないような音が好まれるのでしょう。

    そういう人たちは、レンジが広くて音に隙間があると大人しい、迫力が無いと感じてしまう、そしてそれが悪いものだと判断してしまうのかもしれません。

    80年代後半頃から低音をブーストする製品が多く出始め、今でも新製品が出るわけですから、そっち方面のニーズは高いのだと思います(理解はできませんが)。

    Re: No title

    arazashさん、こんばんは。

    > 昨今のレコードブームで元来のオーディオ好き以外が入ってきているので、レビューの判断は難しい所です。
    > オーディオに興味ない人が音楽を聴くといったら通勤通学の時間がメインでしょうから、外部の騒音に負けないような音が好まれるのでしょう。

    なるほど、これまでオーディオを趣味としていなかった人たちがによるレビューもあるという見方ですね。
    そうか、そこまでは考えていませんでした。
    ただ、デアゴ盤のAbbey Road購入者の何割かは久しぶりにレコードを買ったという人なのは確かだろうと思っています。

    > そういう人たちは、レンジが広くて音に隙間があると大人しい、迫力が無いと感じてしまう、そしてそれが悪いものだと判断してしまうのかもしれません。

    入門時は得てしてそうですね。それは自分のことを振りかえっても思い当たるふしがあります(苦笑)。

    > 80年代後半頃から低音をブーストする製品が多く出始め、今でも新製品が出るわけですから、そっち方面のニーズは高いのだと思います(理解はできませんが)。

    確かに、今も音を加工して聴かせるというか、最初から正しい音を出そうとしていない商品ってありますね。製造コストから自ずとそういう商品になってる気もしますが、ああいう音を好むニーズもありそうです。


    プロフィール

    JD

    Author:JD
    自分の感覚としては(昔の?)ラジオDJのネット版のようなもののつもり。今日本では7インチ「シングル」盤のことを誤って「EP」と表示するような有様となり、言葉の不理解と誤用の蔓延に落胆している。「EP」は「シングル(=片面1曲、両面で2曲収録)」よりも曲数を多く収録する(標準は4曲、3曲や5曲や6曲の場合もあり)意味のExtended Playingの略。どうかシングル盤とEPとを正しく使い分けて欲しい。

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