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    「音が良い」は人それぞれだけれど……

    *追記10/11:
    以下本文に〝PA的な音〟と言う言葉を使っているが、自分の意図した意味では伝わりにくかったどころか、誤解を招く可能性が高いとわかったので、同じカテゴリー内に補足記事を記した。それも合わせて読んでいただきたい。


    タイミングとしては前回の流れを受けて、ちょうど良いのかなと思えた話題を。

    それは、オーディオ雑誌「ステレオ」誌が90年代に選んでいた年間最優秀録音盤あるいは優秀録音盤についての経験談・失敗談とでも言えば良いか。




    これまで、「音が良いは人それぞれ」と書いているが、実際、各人が自宅でどのような機器を使い、どのような部屋で、どのような音量で、聴いているかなどわからない。

    皆それぞれ自分の聴いている環境で、主観的に(自分が)「音が良い」と思う〝音〟を自分の物差しで判断しているだけのこと。その人が思う「良い音」を他の人が同様に感じるかどうか正直わからない。

    唯一、外から客観的に判断できるのは、音量であったり周波数帯域であったり。
    そのため、音の質感のグレードも生々しさも歪っぽさも、音色や再現される空間の正しさもおかしさも判断できない。

    だから、オーディオという趣味は万人共通の絶対的な基準となる「良い音」のものさしが無いというか、たとえものさし代わりになりそうなソフトを渡されても、渡された本人がそれを使って機器や設置状況、部屋の響きを正しく調整できるわけでもない。だから、「良い音」は人それぞれになってしまう。

    結局は個人の経験によって耳を磨かざるを得ないと言うか、なんともアナログな趣味という以上にあやふやな趣味というか……。

    そういう趣味ゆえに、オーディオ雑誌で取り上げられる優秀録音盤は、ひとつのものさしになるのだろうと昔から思っている。

    けれども、1990年代の僕は「ステレオ」誌が選んでいた年間最優秀録音盤(CD)を毎年あるいは1年おきぐらいに聴いては、その録音の何が優秀録音なのか、恥ずかしながら全く理解できなかった。

    と言うのも、恥を覚悟で記しておくと、90年代初頭までの僕はrock/folk/pop系の音楽しか聴いておらず、Jazzやクラシックはそれこそほとんど聴き始めに近かった。だから、優秀録音と言うのは、できる限り音がクリアで周波数帯域的にも上から下まで収録してあり、誰が(どんな装置で)聴いても音が良いと思えるような録音だとばかり思えていた。

    そこで、優秀録音として掲載されたクラシックだったか高音質録音で有名な小規模レーベルの作品だったか、そういうのを1~2枚買ってどんな音が出るか楽しみにしていたのだけれど、出てきた音はなんと言うか(当時の僕の感覚で)あまりにも普通だし素っ気無い音だった。えっ、これのどこが優秀録音なの?ただ録音してきたそのままじゃないか!ってな感じ。

    今思えば、ちょうど前回取り上げた『Art Pepper meets the rhythm section』の各種ステレオCDで言うと、赤シャツCDこそが当時の僕が予想していた高音質盤であって、僕が再び手持ちを聴き比べてベストと思えたXRCDは、まさに普通の音に分類されたはず(苦笑)。
    だから、前回各種CDを聞きながら、「昔なら僕もこれは音が良いと言ってたろうな」などと思ってしまった。

    僕は90年代を通じて、オーディオ機器全体のグレードアップを2回行っているが、後半においても、オーディオ雑誌で選ばれる良い音と自分が思っている良い音とは合わせるべきピントが合っていなかったことに気づいていなかった。僕は子供の頃から当時まで、PA的な音が良い音であり、オーディオ再生で追い求める音だと思い込んでいたのだった。

    PA的な音とは、スピーカーがギターアンプになり、まさにそこから音が出てるような音とでも言えばわかってもらえるだろうか。あるいはボーカル用のモニタースピーカーから声が直接聞こえてくるようなイメージでもある。rockやblues系の音楽がメインだとそう思い込んでしまうのかもしれない。さらに言えば、「音空間が広がる」と聴いたときに思い浮かべるのは、PA的に放出される音が部屋に空間を作り出すようなイメージだった。

    けれども2000年代以降に初めてハイエンドと呼ばれるプリメインアンプ(Concentra)を中古で購入し、それによって再生された音で録音空間を再現するという別のオーディオが存在することを遅ればせながら初めて耳と脳で知った。PA的に音の空間を新たに作るのでなく、録音されてあった空間が現れるという全く別のベクトルの話だった。そして、昔何が優秀録音か?全くわからなかったCDを再び聴いてみようという気になり、ようやくその意味がわかったのだった。PA的なオーディオでは聞こえない世界がそこにあった。あれからそれこそ10数年しか経過していない。

    何がどう優秀録音なのか?長い間全然気づけなかったのは、きっと子供の頃からPA的な音が良い音だという思い込みにより、一つの聴き方だけしか見ていなかった(見えていなかった)からだと思う。


    ということで、実際問題としては「音が良い」は人それぞれだけれど、オーディオ雑誌が選ぶ優秀録音は、それが自分のオーディオで再現できていなくとも、選ばれるだけのクオリティがあり、ある意味、それに自分が同意できるようになることが一つのものさしになるのかなと思っている。





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    テーマ : オーディオ
    ジャンル : 音楽

    tag : 良い音 音質 オーディオ 空間 再現

    コメント

    Secret

    難しい問題ですね・・・

    こんばんは、
    『音がいい』という言葉・・・何を基準にして答えたらいいのでしょうかね~

    人によってはラジカセでも音はいいという人もいるし、高級オーディオだから音がいいという人もいます。

    結局のところ自分が『音がいい』と思ったものがいいものだと思います。

    先日、オーディオマニア(給料の殆どをオーディオにつぎ込み曲者!!)の自宅でそれこそ総額何百万という私には絶対手にすることの出来ないオーディオシステムを聴かせて頂きました。

    正直『総額ウン百万円のオーディオシステム』と聞いただけで『凄い音』=『いい音』と思ってしまう私なので正直私の場合の『いい音』はいい加減なものだと思います。

    実際自宅に帰って自宅のオーディオを聴いた時、ふだん聴きなれているせいか?自分の方がいいかな?何て思ったりします(実際は全然足元にも及ばないですが)

    結局私の場合は高額に驚かせられて『いい音』と思い込んでいるだけなのかなぁ~なんて思います。
    勿論自分のオーディオが100%満足している訳でもなく不満も沢山ありますがそれでも自宅で聴く音楽が一番と思います。あれ?話がズレたかな・・・

    No title

    JDさん、こんばんは。今回のお題は、実に言い得て妙でありますね。

    いい音の尺度が人によって異なってしまう、その端的な原因のひとつがライヴ会場のあのPAの音です。生で体験していると錯覚を起こさせるPAの音、実はあの音が電気処理によって加工された疑似的な音であるものを、多くの人は最高の生音だと錯覚して受け取ってるんですね。

    ところがそうではない、小さなクラブで体験するPAを通さないジャズの生楽器による演奏、そして、大きなホールでありながら同じくPAを介さないクラシックのオーケストラの演奏、それは誰もが共通して気づかされる、ダイナミックでありながらもナチュラルな繊細さを内包した本物の生音であることがわかります。その音が放たれる空間との関係性によって、音が出てくる瞬間の佇まい・実在感が生まれる。それを小賢しい加工なしに忠実に再生できるかどうかが、オーディオ的に言う本来の良い音であると、拙はそういうふうに考えます。

    かつてオーディオの合言葉でもあった「原音に忠実な音」の「原音」とは何であるか、そこを履き違えてしまったことから、そもそもの混乱が生じてしまったんでしょうか。ルディ・ヴァン・ゲルダーのように、「原音」を加工することで、生の演奏ではないレコードとして聴かせる方法論を発明したことから、原音に忠実ではないけど良い音に聴こえるものが量産されるようになりました。

    良い音というのは、生の音=原音をそのままに再生して聴かせること、しかしながら、オーディオ的にそれこそが最も難しいテーマなので、人それぞれの主観が反映された疑似的な良い音が世の中にたくさん出回る結果になってしまった、ということなのかもしれません。

    横から失礼いたします。
    路傍の石さんの「音の佇まい」のお話、素晴らしいですね。

    さてPAの音ですが、電気的であるということに加えて、もう1つ特徴があると思っています。
    それは、高効率を追及するあまり、超低域の音がほとんど出ていない、ということです。

    質の高い超低域の再現ができて、目の前に生演奏が広がる。これはオーディオの醍醐味だと思っております。

    人の事情もそれぞれ

    JDさん、こんにちは。
    いつも楽しい話題を読ませて頂いて
    おります。
    何度かコメントをしようと書くも
    スマホだと広告に邪魔をされて
    諦めたこと数度。今回も2回目の
    チャレンジで文章がおかしいかも
    知れませんがご容赦を。

    さて、音が良いは人それぞれ、
    まさしくその通りだと私も思いました。
    私のオーディオシステムは、アンプ
    とプレーヤーはメーカーのフラグ
    シップモデルですが、スピーカーは
    社会人となる前にお金を貯めて
    買った思い出の品で、価格も一番
    安くアンバランスなシステムと
    言えます。
    エッジ交換も経験しており、
    スピーカーを取り外してリックに
    詰めてサービスに持ち込んだり
    (重かったなぁ)とますます思い
    入れが強く、最近の高解像度・
    ハイスピードなスピーカーに
    比べたら眠い音ですが、自分に
    とっては落ち着きある音で、私にはこれはこれで良い音と感じています。

    オーディオ展示会では
    ソナスファベールのスピーカーを
    聴く機会があり、小澤征爾のCDで
    したが、まるでコンサート会場にいるかのような音でした。
    良い音は、五感に作用し昔の
    クラシックコンサートホールの記憶
    を呼び起こしてくれるようです。
    来場者は口々に
    「良い音だねえ。でも、こんな高く
    て大きいのは置けないねぇ。」と
    漏らしていました。
    私も同感でした。

    昔、まだJAZZに目覚めていない時
    に、優秀録音のCDに感動して購入、
    JAZZ好きの会社の人に貸したことが
    ありました。すると次の日、
    「何でこんなものを教えるんだ」
    と大激怒されたことがあります。
    何故そこまで怒られなければ
    ならなかった、未だ疑問です。

    音が良いは人それぞれですが、
    人の事情もそれぞれなのですね。

    Re: 難しい問題ですね・・・

    TETSUさん、こんばんは。

    > 人によってはラジカセでも音はいいという人もいるし、高級オーディオだから音がいいという人もいます。
    > 結局のところ自分が『音がいい』と思ったものがいいものだと思います。

    自分が音が良いと感じたなら、それは主観的であっても音が良いのだと思います。
    でも、やっぱり絶対的な指標となるべき「良い音」はあってしかるべきだと思います。もしかしたらそれは正しい音なのかもしれません。

    > 実際自宅に帰って自宅のオーディオを聴いた時、ふだん聴きなれているせいか?自分の方がいいかな?何て思ったりします(実際は全然足元にも及ばないですが)

    僕は自宅以外で音を聞き分ける自信はないですね。だから高級でも安価でも良い音に思えることが多いです。
    テレビでやってるような「片や入門用の安価なバイオリン、片や100万円もするもの」を比較する音源があった場合、自宅で聴けばほぼ確実に両者を言い当てられると思いますが、他のところだと全く自信ないですね。

    > 勿論自分のオーディオが100%満足している訳でもなく不満も沢山ありますがそれでも自宅で聴く音楽が一番と思います。あれ?話がズレたかな・・・

    そのことをこれまで「音が良い」は人それぞれと題して書いてきました(笑)

    Re: No title

    路傍さん、こんばんは。

    もしかすると、路傍さんにも誤解を与えたかもしれませんが、僕が「PA的な音」として言いたかったのは、コンサートでのPAの音ではありませんでした。でも、一般論として書かれているのであれば、僕自身は(PAを使った)ライブ会場での演奏を良い音で聴いた経験が一度もないので興味深く読ませてもらいました。
    ライブ会場の音は昔よりも改善されてきているとは思いますが、オーディオ的にみたら全然駄目ですね(あくまで個人的意見です)。

    ジャズクラブでの生演奏も、僕は耳が弱いので良い音だった記憶はほとんどないのですが、クラシックだけは別物ですね。

    > その音が放たれる空間との関係性によって、音が出てくる瞬間の佇まい・実在感が生まれる。それを小賢しい加工なしに忠実に再生できるかどうかが、オーディオ的に言う本来の良い音であると、拙はそういうふうに考えます。

    僕も生のクラシックを聴き、同時にオーディオで再生することが良い音を知る・近づくための最も良い方法のように昔から思っています。ただし、ずっとスピーカーから聞こえる楽器や楽団の音のみに耳をフォーカスしていましたし、クラシックのLPを買い始めたのも1985年くらいからでした。聴く頻度が上がるのは90年代以降です。

    > かつてオーディオの合言葉でもあった「原音に忠実な音」の「原音」とは何であるか、そこを履き違えてしまったことから、そもそもの混乱が生じてしまったんでしょうか。ルディ・ヴァン・ゲルダーのように、「原音」を加工することで、生の演奏ではないレコードとして聴かせる方法論を発明したことから、原音に忠実ではないけど良い音に聴こえるものが量産されるようになりました。

    それについては、ソフト以上にハード側の進歩や普及の仕方と関連しているように思えますね。
    ポータブルのレコードプレーヤーやAMラジオで聴く人が多数派だったわけなので。

    > 良い音というのは、生の音=原音をそのままに再生して聴かせること、しかしながら、オーディオ的にそれこそが最も難しいテーマなので、人それぞれの主観が反映された疑似的な良い音が世の中にたくさん出回る結果になってしまった、ということなのかもしれません。

    そうかもしれないですね。
    いろいろ考えると深すぎて……。

    Re: タイトルなし

    op205さん、こんばんは。

    > さてPAの音ですが、電気的であるということに加えて、もう1つ特徴があると思っています。
    > それは、高効率を追及するあまり、超低域の音がほとんど出ていない、ということです。

    ライブ会場のPAのことですよね?高効率を追求していたとは知りませんでした。
    いずれにせよ、オーディオの音とは比較にならないと僕は思っています。

    Re: 人の事情もそれぞれ

    くまくまくんさん、こんばんは、お久しぶりです。

    > 何度かコメントをしようと書くもスマホだと広告に邪魔をされて
    > 諦めたこと数度。今回も2回目のチャレンジで文章がおかしいかも
    > 知れませんがご容赦を。

    実は僕も先日初めてスマホで自分のブログを見て、なんとも読みづらい設定にされていることを知りました。
    あの広告を解除するには月額費用を支払いすれば良いみたいなのですが……。

    > さて、音が良いは人それぞれ、まさしくその通りだと私も思いました。
    > 私のオーディオシステムは、アンプとプレーヤーはメーカーのフラグシップモデルですが、スピーカーは社会人となる前にお金を貯めて買った思い出の品で、価格も一番安くアンバランスなシステムと言えます。

    そういう機器組み合わせなのですか。スピーカーを変えれば一気にグレードが上がるような気もしますね。

    > エッジ交換も経験しており、スピーカーを取り外してリックに詰めてサービスに持ち込んだり(重かったなぁ)とますます思い入れが強く、最近の高解像度・ハイスピードなスピーカーに比べたら眠い音ですが、自分にとっては落ち着きある音で、私にはこれはこれで良い音と感じています。

    そういう品はなかなか手放せないですね。僕はそこまでの思い出はないものの、スピーカーの買い替えについてはずっと悩んでいます。予算もありますが、色・形・サイズを非常に気に入っているので。でも2セット置けるほどに広くないし……。

    > 来場者は口々に「良い音だねえ。でも、こんな高くて大きいのは置けないねぇ。」と漏らしていました。私も同感でした。

    それ、よくわかります。
    特に近年は、部屋の空間サイズとスピーカーサイズ、そして通常の音量との関係が音質を決める大きな要因だと思っているので、部屋サイズに不似合いな大きなスピーカーは使えないですね。

    最後に書かれていた経験談については、どうして怒られたのか?僕にも全く見当がつきませんでした。もしかしたら、あまりに音が良かったのでついつい大きな音で聴いてしまって、家族のひんしゅくを買ったとか?(笑)

    プロフィール

    JD

    Author:JD
    自分の感覚としては(昔の?)ラジオDJのネット版のようなもののつもり。今日本では7インチ「シングル」盤のことを誤って「EP」と表示するような有様となり、言葉の不理解と誤用の蔓延に落胆している。「EP」は「シングル(=片面1曲、両面で2曲収録)」よりも曲数を多く収録する(標準は4曲、3曲や5曲や6曲の場合もあり)意味のExtended Playingの略。どうかシングル盤とEPとを正しく使い分けて欲しい。

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